反撃のシナリオ | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

反撃のシナリオ

相変わらず、妻は五月蝿さ過ぎる。

車の助手席でがなりたてるのだ。

俺が交差点手前で、新しく出来たらしいラーメン屋を覗く様に眺める。

少しスピードも落ちた。

助手席で腕組みをして、踏ん反り返っている妻が空かさず言った。

「交差点の手前でチンタラしていたら、信号変わっちゃうでしょ」

素直な俺は、悪かったと思ってしまう。

そして、置かれた状況を冷静に考え、ふざけるなという思いで腹が煮える。

間もなく、怒りさえ忘れてしまう。

忘れてはいけないのだ。


反撃すべきだった。

思ったがもう遅い。

同じ事の繰り返しだった。

頭の中で、今起った状況を分析し反撃のシナリオを書く。

いい加減にしろ。隣で腕組みして、何様のつもりなんだ。チンタラってお前、俺は舎弟か何か。

そんなに気に食わなかったら、自分で運転しろ。

そう言って、車を降りる。

次にまた言ってくるに違いない。

こう反撃しよう。

思ったが、妻は何も言ってこなかった。


悪いのは俺なのだと思い続けてきた。

これからは、違う。


そもそも、どちらがいい悪いなどない。

先に折れた方が、悪いということになる。

それだけだ。