機械 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

機械

朝、妻と顔を合わせ、第一声が俺に対する文句であった。

腹の中を掻き回されるような、溜息。

唸るような、不機嫌な息遣い。

それが寝るまで続いた。



たまらず庭へ出る。

すぐに庭の掃除をしろと、言葉が追ってくる。




トイレに入った。

すかさず、娘の面倒を看ろと怒鳴り声が上がった。


妻は疲れたと何度も呟き、昼飯も食わずに寝室へ消えていった。

俺は手早く飯を作り、それをそっと寝室へ置いた。

結局、妻はそれに、いっさい手を付けなかった。


そして、俺の目の前で飯を作り始めたのだった。



少しずつ、人間的な感情が消えて行く。


泣きもしない。

怒りもしない。

喜びもしない。

それでも、哀しみだけは消えないだろう。


機械になっていく。


そして、廃棄処分される日を、何も感じないまま待ち続けるだけだ。