独り、それでも | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

独り、それでも

お湯を頭から浴びせられた。

風呂である。

娘は、唸るように笑いながら五度、それを繰り返した。

六度目に、止めさせた。

もう、と声を上げ、浴槽の端で俺に背を向けてしまう。

赤ん坊らしい、ぷくりとした体が、愛らしい。

どことなく、小便小僧に似ていると思った。


いつもと変わらない。

善くも悪くもない一日。


そう思ったのはつかの間だった。


妻が帰宅する。

お帰りの声も、妻には届かないのか。

最初に出た言葉は、ものを頼む命令のようなものだった。


また機嫌が悪い。

妻の気持ちをわかろうとしても、そこまでしかわからない。

わかりたくもなかった。


俺は、日々生きている。

それだけだった。

蔑まれながら、それでも、愛情を渇望する様は、滑稽ですらある。

毎日、こうして自嘲の言葉を並べていて、愉しいか。

同じことの、繰り返し。

妻に話など出来るような状態ではない。


娘を見つめていた。


娘は眼を逸らし、また、もう、という声を上げ背を向けた。

妻のもとへ駆けて行く。


独り、生きているのと同じだ。

刹那、それを感じた。