不機嫌な、朝
忙しい朝だということは、わかっていた。
いつもより、早く起きて手伝おうと思った。
叩き起こされるよりは、ましだろう。
妻は、娘の弁当作りや、身支度で忙しそうだ。
身の置き場が、ない。
逃げるように、犬の散歩へ行った。
晴れた朝だった。
カラスが鳴いている。
生い茂る木々を見上げても、どこにいるのかわからなかった。
帰宅し、顔をあわせるなり、妻はこう言った。
トイレットペーパーが、引き出されたままだ。
かぎを入れる箱の蓋が、開いたままだ。
俺は、寝ぼけていたのかもしれない。
しばし、事の顛末を考えた。
ただ、忘れた。
それ以上でも、以下でもない。
注意力が散漫だ。
妻によく言われることだった。
そうかもしれない。
それでも、注意されることは、減っていた。
娘に、服を着せる。
それで、出かける準備は終わりだった。
そのままチャイルドシートに縛りつけ、娘たちを見送った。
娘が手を振っている。
妻は不機嫌な表情のままだった。
俺はそんな妻の顔を、車が走り去るまで見つめ続けていた。
機嫌の悪いときが、あって当然だ。
それが、一日でも少なくなればいい。
そして、穏やかな気持ちで妻と接していればいい。
空を見上げた。
明日も晴れるだろう。
なんとなく、そう思った。