結婚という名の墓場 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

結婚という名の墓場

「結婚は人生の墓場とは、よく言ったものよ」

以前、妻が言った。



どのような経緯で、そんな言葉を浴びせられたのか、思い出せない。

それでも、妻が墓場と思う気持ちは、わかる。

想い描く理想と違う。

それがすべてなのだった。



昔の恋人との比較。

友人夫婦との比較。

よく引き合いに出された。

いかに駄目な夫かということを、嫌と言うほど聞かされてきた。

そして、自分という存在自体がゴミのように思えてくる。



愛される資格すらない男。

ただの、木偶だ。

妻も働いていた。

俺一人の稼ぎでは、娘の習い事すら通わせることができない。

夫として、でかい顔など出来る筈もなかった。

妻の負担を、少しでも軽くしようと、家事を手伝ったりする。

時々、むなしい努力のように思えたりもする。



妻がいて、娘がいる。

それだけで、十分ではないか。

妻に罵声を浴びせられても、その気持ちを受け止めてやればいい。

優しい言葉をかけてくれるなどと、期待すること自体が間違えではないのか。





テーブルの上に、ハンバーグと玉子焼きが皿に盛られ、ラップされていた。

俺のために、作ってくれた弁当のおかずだった。

ありがたい。

素直にそう思えた。




くそったれ。

そう思うたびに、墓場に近づいて行くのではないか。



今の状況でも、十分幸せだ。


刹那、思った。