順位 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

順位

全力で、走り回っている。

俺が捕まえようとすると、面白がって逃げる。

追いかけるのをやめると、近づいてくる。

捕まえようとして、庭を走り回っていた。

年寄りなのに、やるじゃないか。

老犬である。


どうやら、遊ばれているのは俺のほうらしい。

餌で釣って、捕まえる。

首の皮を掴んだ。

引っ張ると、意外なほど伸びて、大人しくなった。

直後、隙をみて逃げられた。



その後、いくら追いかけても捕まらない。

餌でおびき寄せる。

首に紐をかけようとすると、餌だけ捕って逃げていく。

大声で、犬の名前を呼んだ。

距離を空けて、こちらを窺っている。

こっちへ来い。

今度は、怒鳴り声を上げていた。

妻が出てくる。


「大きな声上げないで。ご近所に聞こえて恥ずかしいでしょ」

「いくら呼んでも、捕まらないんだ」




妻が、老犬の名前を呼んだ。

妻の前に、走り寄って来る。


「お座り」

その後、大人しく首に紐がかけられた。





犬は、群れの中で順位を決める。


俺がいくら世話をしても、それは変わらない。



妻が一番。

自分が二番。

俺がその下、か。



笑いたくなってきた。

妻が家に入ると、老犬の首に掛かった紐を、

俺は、ちょっと強く引っ張った。


娘の順位は、俺より上、かな。


頭の中で、呟いていた。