闇
部屋に服が投げ込まれた。
「ここに干して」
今朝、俺が洗った洗濯物だった。
妻と娘の寝室に、干した。
すべて俺のもので、まだ乾いていないものがほとんどである。
結構な量で、この部屋に干す場所などあるはずもなかった。
そのままテーブルに重ねておく。
妻の不機嫌な息遣い。
物音とともに、聞こえてくる。
何か言うと、言い訳するなといわれる。
だから、黙ってそれを耐える。
それでも、耐えられない時もある。
ふざけるな。
そう吐きすて、家を飛び出す。
そうしたかった。
そう思っても、行く当てなどない。
ましてや、金もない。
そして、妻の顔色をうかがいながら、
頭を低くして戻ってくるのも、目に見えているのだった。
一度家を飛び出したことがある。
行った先は、図書館だった。
俺はそのまま寝床に潜り込んだ。
眼を閉じた。
眠れなかった。
怒りなのか。諦めなのか。
ざわついた思いが、心の中に澱んでいた。
眼を開いた。
どうせ闇なら、眼をつぶっていたほうがいい。
呟いていた。