励ましの言葉

ひどい頭痛だった。

頭の中の血管が怒張し、脈打っているのがわかる。

早く休みたい。


それでも、犬の散歩を済ませた。

「今日は、風呂入れなくていいかい」

「入れてよ」

頭が痛いなどと言えない。

一度、嫌な顔をされたので、体調が悪くなっても黙っている。

発熱は耐えられる。

だるさだけで、普通に動けるのだ。

頭痛は、動くと吐き気が襲ってくる。



風呂を洗った。

しゃがんだだけで、頭の中のものが揺さぶられ、吐き気がした。


夕食をとりながら、何とか言葉を発する。

とげのある言葉が返ってきただけだった。


娘と、風呂に入った。


温まれば、痛みは消えるかもしれない。

食後に飲んだ、頭痛薬は、まだ効かないだろう。


痛い。


お湯を頭からかぶった。

「あっ、涙だ」

娘が、頭から滴り落ちて、頬を伝う雫を指さし、言った。

「泣かないでね」

泣いているわけではなかった。

むしろ、娘のその言葉で涙が出そうになった。


「大丈夫だよ。ちょっと頭が痛いだけなんだ」

「頭痛い？」

娘がそう言って、頭を撫でてくる。


「心配してくれて、ありがとう」

娘に、言っていた。


娘は、おもちゃで風呂の水を掬っている。


それを、頭から浴びせられた。



ちょっとだけ、痛みが和らいだような気がした。