怒り | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

怒り

こころ穏やかに。

思いが人をつくる。



怒り、嫉妬、侮蔑。



それらの感情は、自らを不幸にする。



日差しが路面を照り返し、きらきらと輝いていた。

暖かい。

道路は地平へ収束し、徐々にくすんで空と同化しそうに思える。




娘が歌っている。

英語の歌である。


おもしろい。


そういう風に解釈するのだと、感心した。

妻も笑っている。




ショッピングセンターに着いた。

車のキーを抜き、外で待っていた。

妻は、チャイルドシートから娘を下ろしている。

正面のポスターにぼんやりと視線を送っていた。


女性が二人写っている。


声が聞こえたような気がした。


妻である。


娘がいる後部座席側へ回った。


「人の話、聞こうと思ってないでしょ」

「ほんと、馬鹿なんだから」

「やだねえ。おとうさんは」


最後の言葉は、娘に投げかけられた言葉だった。


気持ちが、一瞬で萎えた。

心穏やかに。

悪い思いに占領されないように。




無言だった。


口を開くと、そこから怒りが噴出しそうに思えた。




家に帰り、風呂を洗い、布団をひいた。





考えていた。



何故そこまで、言われなければならないのか。


いいがかりとしか思えないことで、俺は馬鹿呼ばわりだ。


それなのに、こうして家事をこなしている。



不意に憤怒が噴出してくる。


壁に拳を叩きつけていた。



「まいったな」

呟いていた。


「俺は仙人じゃないんだよ」


今夜も満月だった。