心から、笑う
腹を抱えて笑ったのは、いつの事だったか。
箸が転がっても、おかしい。
そんな時が、この俺にも確かにあった。
片方の、口元だけ上げて笑う。
どこか卑屈な笑顔。
大人になり、すべての事を斜めに見てしまうからなのか。
それとも、心がすさんでいるからなのか。
考えても、わかりはしなかった。
最近のTVを観ても、笑えない。
他人を、こき下ろして笑いをとる。
くだらないことをやり、観ている方は呆れてしまう。
そして、それを面白いという事にしてしまう。
そんなものばかりだった。
娘と二人、子供向けの番組を観ていた。
ピンクや緑、茶色などの着ぐるみが出て来て、何かやっている。
特に、緑色のいちばんちいさなその生き物が、微笑ましかった。
おっとりした、緑色の生き物の行動は、あまりにも純粋で、そして真っ直ぐだった。
気が付いたら、笑っていた。
斜に構えて見ることなど出来ない、単純明快な物語。
邪推や軽蔑の気持ちなど、入り込む余地は、ない。
俺は、心から笑ったのだろうか。
娘は笑いもせず、真っ直ぐにブラウン管を凝視していた。