絵本 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

絵本

その絵本は、娘の寝室の本棚の一番端に、あった。


一度も読み聞かせたことがなかった、絵本である。


猫の話である。


たくさんの、飼い主に飼われ、死に、また生まれ変わる猫。

どんなに立派な、飼い主であっても、好きになれない。

自分が一番、好きなのであった。


あるとき、一匹のメス猫に出会う。

何度でも、生まれ変われる自分を、すごいと思わない。

そんな、メス猫を愛するようになった。

初めて、自分以外のものを好きになったのである。

そして、子供も生まれる。


そして、別れ。


一度も泣いたことのないその猫は、号泣するのであった。

そして、もう生まれ変わることはなかった。


俺は、泣いていた。

絵本で、泣いていた。




俺は、自分が大嫌いなんだよ。

呟いていた。