彼岸 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

彼岸

「なにも考えられないわけ?」

「ほんと、どうしようもない」

「あまやかされて育ったから、こうなんだろうね」




昨日は、家族で出かけた。

彼岸の中日だった。

俺が忘れた。

そう言っているのだった。


「少しは、自分で率先して動けないの?」


墓参りの準備のことだろう。

朝、妻がいろいろと準備をしていたようだった。



墓参りに行った。

風もなく、空には雲ひとつなかった。

頭上を見上げると、青い。

しかし、水平線の方は、くすんだ白だった。



娘が今にも転んでしまいそうだ。

俺の前を走っている。



親父とおふくろの墓前に手を合わせた。

俺たち3人を、見守ってください。

心の中で、祈った。



娘は、墓石の周りを走り回っている。



妻は何か祈ったのか。

なんとなく考えていた。




そして昼過ぎ。

風が強く吹いていた。