人生訓
壁に貼り付けられた一枚の紙に、人生訓のようなものが、
上下に何行も書かれていた。
上の段が、幸福。
下の段が、不幸。
最初の一行を読んで、白けた気分になっていた。
朝早く起きる人。
暗い気持ちで生活する人。
こんな内容が、十行以上も続いているのだった。
ショッピングモールに、隣接するラーメン屋。
麺が茹で上がるまで、妻と、娘の話をしていた。
彼女の果てしなく広がる可能性。
俺たちは、信じて疑わなかった。
子育てに関する認識だけは、ほとんど同じ考えなのであった。
いつになく、話が弾んた。
隣のテーブルも、うちと同じような子供連れだ。
お互いに、挨拶を交わす。
子供を連れていると、良くあることだった。
食事を終えて妻が言った。
「それで、テーブル拭いといて」
おしぼりのことだった。
「先に、お金払っておくから」
子供がいると、どうしても汚れてしまう。
テーブルの下に落ちた、食べかすも拾い、テーブルを拭いているとき、
俺はこんな言葉を聴いた。
「仕切り屋だね」
隣のテーブルである。
妻のことを言っているのか。
テーブルをきれいにして席を立った。
また、声が聞こえた。
「ある意味、かわいそうだね」
間違いなく、俺のことだろう。
視線も感じていたのだった。
腹は立たなかった。
言いたい奴には、言わせておけばいい。
もう一度、壁に貼られた人生訓に視線を向けた。
人生の良し悪しなんて、だれにもわかりはしないさ。
心の中で呟いていた。