ベルマーク活動の問題点と今後について 神戸市会議員 五島だいすけ

会計士政治家の視点から政治・社会を見る

 

ベルマーク活動は

みんなでベルマークを集め、たまったマークで学校の遊具など

子供たちの教育に使う事ができるものを寄付できるシステム

素晴らしいものなのですが

PTA活動などの中で、「ベルマークが大変」という声も多いので

ベルマーク財団のHPや公開されている財務委資料などをよく見てみました

 

結論としては、活動自体は素晴らしいものの効率が悪すぎる事が分かりました。これからの教育のためにも改善が必要です。

以下、お読みください

 

  目次

 ベルマーク活動とは ベルマーク活動の評価 仕組みの問題点は何か

 今後望まれること

 

 

  ベルマーク活動とは

 

「すべての子どもに等しく、豊かな環境のなかで教育を受けさせたい」ベルマーク運動は、そんな願いをこめて1960年に始まり・・・(財団HPより)

 

 

協賛企業が各社の商品にマークを添付し

消費者が買った商品に貼ってあるマークを集め、ベルマーク財団に送る事で、1点=1円として

教育のための買い物が出来ると 皆さんご存知のとおり簡単にいうとこういう活動です

 

下記が、ベルマーク財団のHPにある仕組みのフロー図になっています

我々が集めたマークが財団に送られると、ベルマーク財団が協賛会社に市場調査費という形で請求を行い、その分の金額が教育設備購入資金としてベルマーク財団が管理する口座に入金されます

この資金は、HPなどから各団体(学校PTA等)が確認でき、また、子供たちのための買い物が出来ます

 

ここで、市場調査費として請求されるのは、マーク1点につき1.25円であり

1円部分は教育設備購入資金となり、残りの部分はベルマーク財団の管理運営費として財団に入金されます

 

また、下の図の右側部分(協力会社~へき地支援)の部分に協力会社という文言が出てきます

市場で販売する商品にマークを付ける協賛会社と違い

協力会社というのは、たまったマークで買い物が出来る備品を販売する会社の事で

例えば、学校の遊具や備品などを提供している会社です

 

PTAなどの団体が備品などの買い物をした場合に、その購入金額の1割が協力会社からベルマーク財団に寄付され、この部分がへき地の学校などの支援に充てられます

これは、いうなれば子供が少ない地域などは人口も消費も少ないので、マークも集めにくいため、通常のベルマーク活動とは別でそういった地域を支援しようというものでしょう

 

ベルマーク財団の財務諸表を見ると

毎年集まるベルマークは4億点分程度で、コロナ禍の2020年度(2020年4月~2021年3月末)については292,549,186点(約3億点)で、例年より少なくなっているようです

 

協賛会社に請求した市場調査費が教育設備購入資金としてプールされると上述しましたが

この教育設備購入資金は期首に約15億円あり、今年度の入金や出金があった結果、2021年3月末日時点でも15億円程度の残高があります

 

へき地支援などの寄付金は毎年4千万円程度が実施されているようです

 

 

 

 

  ベルマーク活動の評判

 

これには賛否があるようです

当然、活動の理念である、豊かな環境で教育を受けさせたいというところから、保護者が中心となりベルマークを集め、備品などを購入できるものであるため

現場ではありがたいものになっています

私も、こどもが小学校時代には楽器などを購入していた記憶があります

 

否定的な意見としては

単純に面倒くさい

点数を集める手間を考えると、その分現金を寄付した方が早い、

など

 

活動の仕組みとして、ベルマーク財団に集まった点数を、それぞれの協賛会社に分けて集計した後で、請求する事になるため
PTA団体などがベルマークを協賛会社ごとに分けて台紙などに貼り付け、集計し、郵送などをしなければならない事が原因です

 

この活動が、ボランティアで行われていることから

集計にかかる時間を時給換算する事で効率性を検討する事とは無縁だとされている事も、この面倒な手間が不評ながらも毎年続けられる原因とされています

 

PTAでベルマーク担当をするために、仕事を休んだり、有給休暇を取ったりして、ボランティアをした結果が時給より低い点数だった等という悲劇は問題でしょう

 

 

 

 

  ベルマーク活動の問題点は?

 

✅経費率が高い

✅協賛企業の少なさ

✅地域団体の手間がかかりすぎる

 

会計士的な観点から見た場合の問題点として、まずは経費の率が高すぎることです

HPなどにはマーク1点につき1円、0.25円が財団の運営費と記載されています↓(財団HPより)
 

これは、我々消費者の立場から見たベルマーク点数の行方がどうなっているか?という点においては、正しく表現されているのですが

実際に財団のHPにある財務諸表を見るとこの0.25点分のみでは運営費が足りていない事が分かります

 

https://www.bellmark.or.jp/storage/2021/08/02/1224373777/3777.pdf

(2020年度ベルマーク財団 財務諸表)

 

2020年度の財務諸表から、年間の財団の収入は

この0.25点分にあたる80百万円、これとは別に協賛会社の分担金や整理袋発送費用や協力会社の割り戻し寄付金、その他の寄付金などを含めて226百万円あります

財団自体の収入と記載されていませんが、ベルマーク1点=1円部分の金額が292百万円です

 

対する財団の運営費は、2020年度については333百万円となっております

このうち、財団外への寄付が43百万円ありますので、単純に経費としては289百万円がかかっています

 

当年度に集められたベルマークが当年度の備品購入にそのまま使われる訳ではありませんので事は単純ではありませんが、集まったマークがそのまま社会貢献額になっていると捉え

ベルマーク活動による社会への貢献額は 292百万円+43百万円=336百万円

ベルマーク活動にかかった運営経費は、333百万円ー43百万円=289百万円となります

 

2020年度はコロナ禍であるため、活動が低調であったと思われるため、2018年度の金額も同条件で掲載すると 2018年度(2018年4月~2019年3月末)の

ベルマーク活動による社会への貢献額は 413百万円+49百万円=462百万円

ベルマーク活動にかかった運営経費は、360百万円ー49百万円=311百万円となります

 

つまり、我々消費者としての立場から見た場合は、1円の社会貢献のために0.25円の経費がかかっていると見えていますが

実際に、2020年度であれば336百万円の貢献のために289百万円 すなわち1円の貢献のために0.86円の経費がかかっており

コロナ前の2018年度であれば462百万円の貢献のために311百万円 すなわち1円の貢献のために

0.67円の経費がかかっています

協力会社の備品購入に対する1割の割り戻しについては、備品購入額が定価なのか割引されたものなのか?を考えてしまいますが、そこは不明です

ただ、ものによってはネットで買った方が相当安いものもありました
 

とにかく、思っているほど効率的ではなく、経費率(貢献に必要な経費の率と勝手に定義します)が高すぎると思われます

 

 

次に、協賛企業として参加している企業が少なすぎます

上の図は、ベルマーク一覧表とされ、参加企業の一覧でもあります

自分がこどものころ、ベルマークを集めるのが何とも楽しくて、スーパーなどで付いている商品を探したり、家にある商品のラッピングを裏返してマークを探した記憶がありますが

見つけたときに嬉しかったのです

これを裏返すと、実はマークがついている商品が少ない事を意味します ↑のチラシの下の方に今年脱退する企業なども書かれており

だんだんと減少してしまっている現状があると思われます

 

 

そしてやはり問題点としては、PTAなどの地域団体における手間がかかりすぎている事でしょう

社会貢献額に対する経費率が0.67だと記載しましたが、これはPTAなどの集計の手間は含まれていません

これだけ手間をかけてもやるべきなの?という声もあるのは仕方がない事だと思われます

 

 

 

  今後望まれる事とは?

 

ベルマーク活動の理念は素晴らしいものです

今後は、前述の問題点を解決できれば、こどもたちにとって素晴らしい事業であり続けられるのではないでしょうか?

 

経費率を下げ、効率的に活動をするためにも

IT化の時代ですから、現在パッケージからハサミで切り取ってマークを仕分けするような作業はやめる事でしょう

市場調査費名目で協賛会社に資金を出してもらっているところですが、市場調査はもう小売店で十分に出来る時代です

裏を返せば、ベルマークを付けた商品をいちいち集計しなくても、売れた数はわかりますので

そこに「マークを切り取り集計して送付する」という慈善行為を介在させなくとも、企業がこどもらを応援したいという数値は集計できますし、消費者側も、マークの有無を確認して購買の意思決定をすることでこどもの応援をすることができます

 

協賛会社が分担金などの負担をする必要もこれで無くなり、参加企業も増加する事で経費率も下げられるのではないでしょうか?

 

財団自体の存在意義はあるのか?という議論にもなるかもしれませんが、第3者としてベルマークが社会にどれだけ流通し、貢献したいという思いによりどれだけ消費があったのか?また、集まった原資をどう分配するのか?という大事な管理をする組織は必要でしょう

 

誠に勝手な推測ですが、活動が長年にわたり巨大化してきた事で

なかなか転換することが難しくもあると思います、また、最近のPTA活動の縮小などにより運営のための収入も減り、参加企業も減ってしまう等、財団としても悩ましい事が多いのではないかと思われます。思い切った転換をすることで、今後も地域社会と子供たちの為に、活動がさらに素晴らしいものになる事を願います。

 

神戸市会議員

五島だいすけ