コロナ重傷者数は実態を反映していない

 

厚生労働省の定義する「重傷者」は実態をあらわさないのだ

ICU等に入っている患者でなくとも、医者が判断する重傷者はあふれている状況だが

現状はICU等に入っている患者だけを重傷者としてカウントしてしまっており

神戸市でも、重傷者は異常に低く公表されている(大阪など他都市も同じである)

市民に正しい情報をしってもらうためにも、地域医療の実態を把握するためにも実態を把握できる正しい情報が必要である

 

 

下記グラフ、数値の推移をみて頂くと分かるが、昨年の4月から5月5日まで、第1波~第4波と言われる中で増減を繰り返してきているが

入院中等(入院者数、宿泊療養者数、自宅療養者数、入院調整者数の計)が激しく増加しているのに対して重症者数はそれほど増加していない事になっている。(実数が少なすぎて分かりにくいので、グラフの下の表を見て欲しい)

 

重傷者数/入院中等の割合は、入院中等の数値が増加するに従い減少しているが

英国型やブラジル型と言われる変異株の率が増加している中「変異株については病状の進行が早く危険」とされているのであれば、この重傷者の率は増加してしかるべきであるが、そうなっていない。

※数値のソースは 神戸市HP オープンデータより

 (グラフ中の最新数値は5月5日のデータだが、ラベルは5月1日となってしまっているが、直し方が分からないので、このままにしておく)

 

 

医療現場では、変異株について「感染の力が強い」「病状が悪化するスピードが速い」と言われているし、自宅療養中の方が亡くなってしまうケースもあり、実際の重傷者数はもっと多い

重傷者数については、いくら増えても20人を超える事がないのだが、これがおかしいとして当局に調査を依頼していたが

「この20という数値については、神戸市民病院の重症ベッド14と神戸大学付属病院の重症ベッド6の合計であり、実際の重症者の数値をカウントできていない」との回答である

 

なぜこうなってしまうのか?

そもそも重傷者とは何なのか?

下記は厚生労働省が開示している「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 版4.1」の一部であるが、各症状の数値基準、状態や診療のポイントが記載されている

SpO2=酸素飽和度(通常は98とされ、この数値が下がると体に酸素が足りていない事をあらわし、息苦しくなる  自宅療養者にはSpO2を計測するためのパルスオキシメーターを貸与)を基準として、症状を分けているのだが

問題は、中症はSpO2≦93%とされているのに対し、重症に数値基準がない事だ

 

ICUに入室しているか、人工呼吸器が必要なのが重症であるとされている事から

ICU入室か挿管されている状態の患者さんの数を重傷者としてカウントしてしまうのだ

 

複数の医師に聞いたところ、SpO2が90%を切るとかなり重い症状で、苦しくて仕方がない、重症と判断するべきであるという

現状で、市内においては自宅療養している方であってもこのSpO2が90を切ってしまっている方が多く、(そのため往診チームを編成して酸素投与やステロイド系薬品の処方を行っているのだが)上記グラフなどで示した重傷者が上限20にしかならない事は実態をあらわしていないのである

 

厚生労働省は地域の状況を把握するために、地方自治体に対して症状別の数値、特に重傷者の数を報告させているはずであるが、この定義が適切でないせいで、状況をしっかり把握できていないのではないか? もしくは、雰囲気で伝わっていて把握できているのか・・・
 

 

例えばSpO2=90以下が重傷者だとして、重傷者の数を間違いなく公表する事自体が集計などについて自治体の負担にもなるため、今この時に数値をしっかり報告しろ!と言うのは大変なことだ

 

医療現場も保健師の現場もひっ迫しており、目の前の患者さんへの対応だけでいっぱいいっぱいになっている事は明らかで、新たなデータ調整を頼まれても「誰がやんねん アホか!」という怒号が返ってくる状況に違いないが

ゴールポストが動いてしまう状況にある事も事実であり、大いに問題である

 

厚生労働省が、地域の現状を正確に把握したいのであれば、定義づけをしっかりするべきだ

これは以前にも問題になっていた事があり、報道もされている

神戸市の現場においても、こういうデータの管理や解析などについては、保健師に作らせるのではなく、データを扱う事に長けた部署に依頼すればいい

市長は以前、データドリブンな市役所にすると言っていたが、そうなっていない市の現状は変えなくてはいけない

 

現状を把握して公表する事については、対厚労省報告ではなく主なものがある

それは、市民に危機感を正しく持ってもらう事だ

医療や保健師の現場を助けるためにも、事実は正しく情報提供し、市民に正しい認識をしてもらう事が必要である

 

 

コロナでの死亡者についても、5月5日時点で4月18日までの死亡者数のみが公表されており

19日から今日までの死亡者は市民には分からない

これは、年齢と性別について親族の同意を取ってから公表しているためとされているが

上記と同様理由から分かった時点で情報開示していくべきだ

この記事を書いている途中に、

「神戸市長田区の老健でクラスター、感染者100名超・死者13名」

 

こういう報道があったが

 

この死者についても報告はなされておらず、当局も隠蔽するつもりはないのだろうが、隠蔽しているのではないか?と思われてしまうだろう

我々議会も知らされていないので、なぜこうなったのかをここでご報告できないが

本来入院させるべき重症患者を老健に留め置くしかなかったために死者が増加していることは間違いない

年初から同様の、老健や老人施設への留め置きが発生しているため

医療体制が手厚い病院に比べて、留め置きする側の施設への支援が必要だという要望を施設に代わって当局にさせて頂き、現在は保健所が留め置きを指示した場合には、患者1名につき1日1万円の補助が出るようになっている。

何もなかったときよりはマシだが、これでも看護しきれない状況である。

 

このような状況を解決できていない事について、議会人として本当に申し訳ないと思っております。

現状は、現場のひっ迫を解消するためには感染者を減らす事しか出来ないので、出来るだけ感染しないように行動をして頂きますよう、お願い申し上げます。

 

どのように情報公開をすればいいのか?

簡単に情報公開と言っても、正しい情報を集め、HPその他で公表する事自体にかなりの労力が必要である事は間違いない。現状の保健師さんの現場にそれを間違いなくせよという事は酷であると思われる。

例えば、死亡者数については年齢や性別は置いておき、速報値だけでも出すようにする

例えば、重傷者数については、SpO2が90を切った概数を把握し、ICUなどに入れていなくても、これを公開する。 

こうする事でどれだけ危機的な状況なのかは市民が共有できる事になる。

変異株がどれだけあるか?のゲノム検査を事細かくやる事よりも、市民にとってはこちらの情報の方がためになると思われる。 

このような神戸方式こそ今は必要であると市には申し入れているところだが、先に述べた情報を扱う部局などと連携し情報公開の在り方やり方の工夫をお願いしたい。

また、国に対しても、重傷者の定義づけを地方が把握~報告しやすいように明確にすることも要望していく必要があるが、これは私のほうでも地元国会議員さんにお願いさせて頂く。

 

神戸市会議員 五島だいすけ

 

 

※参考

各自治体 兵庫 大阪 東京の同条件数値は以下の通り

 

 

データソースは各自治体HPより

日付はそれぞれ最新情報の掲載日が違うため、同日付になっていない