スペシャルドラマ
「そして誰もいなくなった」
録画していたのをみました。
なるほど、こういう話だったのね。
感慨深く蘇る30年程前のあの一年、、、
私にとって
そして誰もいなくなった
は、途中で途切れて時が止まっていた。
若かりし学生時代の濃度の濃い1ページ、胸のいたみを伴う思い出に大きく関わる演目。
人生であんなに濃い一年を過ごすことはもう2度とないのでは。。
長い長い回顧録です。
中学生の時、中学英語演劇部に所属していた。
英語が好きなわけではなく、演劇に興味があり、中学生だけの部というお気楽さで入部した。
というのも、通ってた中高一貫の学校の中で唯一、英語のレベルが違うという理由で中学生と高校生で別々に分かれている部活だったので。
女子校なので、男役ももちろん、大道具作りなども全部女子でこなす。
それが楽しい。
英語はからきしダメ、でも、舞台は好き。
高校生の怖いお姉さんはいないので、中学生だけでわいわい楽しい。
そんな風に部活を続け、中学三年生を迎えた。
その幕開けから波瀾、、、
私はまさかの部長になってしまった。
不思議な部のシステムで、部長を決めるのは卒業する中3の先輩が次期中3の中から選ぶ。
選んだ側はいなくなる不思議なシステム。
その中で、なぜか私は部長に選ばれた、、、
すでにこの時点で、不穏な空気が、、、
なぜ部長、、、
いや、私だって思いましたよ。
それでも春の一大行事の勧誘活動で無事に新入生を迎え、部はスタートした。
そして、年間最大行事、文化祭の公演に向けて動き出した。
文化祭の公演は、私はやってみたかった舞台演出をやることに。
キャストをやるより、舞台自体を作り上げていくことに興味があったので。
英語の上手い同級生のKちゃんと二人で演出することになりました。
選んだ演目は
赤毛のアン
入部した時から、大好きな赤毛のアンの舞台を作りたいと思っていた。
赤毛のアンは、私だけでなく、女子が大好きなお話。
その分、部員たちのアンを演じてみたいという思いも強い。
キャストは部活とはいえ、オーディションで決まります。
オーディション用のシーンの台本を事前に渡され練習し、やりたい役を演じる。
また、即興でその時指定されたシーンを演じる、、
そんなオーディション。
丸一日かけて部員みんなの演技をみる、、、
皆の演技を見るうちに、なんとなく配役の全体像が見えてくる、、、
オーディションが終わり、放課後、私ともう一人の演出のKちゃんで、配役を決めるためにファーストフード店へ。
主役以外の配役は意外とすんなり決まった、、、
が、問題はみんながやりたがっていた主役のアン。
最後のチャンスとなる中3は、それはそれは思いが強い。
中でも、同級生仲間でもある中3部員の2人が、どうしてもアンがやりたい!と意気込んでいた。
下馬評有力候補のその2人。
が、、、どちらも決め手に欠ける。
何となく部全体で、その二人のうちどっちかだろうという空気が流れているので、
なんとかして、どちらかに決めようとKちゃんと私の間に暗黙の了解が働く。
5時ぐらいから話し始めて、堂々巡り、
もうすぐ夜9時になろとしていた。
決まらない、、、、
そして、私は
今まで黙ってたある思いを口にした、、、
「Iさんのオーディションの時の演技、実は私、泣いちゃいそうになったんだけど、、、」
するとKちゃんが、
「えっ?私も。」
即興オーディションで、演じてもらったシーン。
思わず涙が出そうなぐらい心を打たれる素晴らしい演技だった。
オーディションで感情移入して泣いちゃうなんてありえない!と涙をこらえた私。
だけど、私だけでなくKちゃんまでもが泣きそうになってたなんて。
彼女の演技は本物だ、、、、
演出の二人が2人とも涙しそうになるなんて。
何時間も堂々巡りしていた主役の配役が、この事実ですっきり決まった。
Iさんほどアンを演じれる人はいない!
Iさんは中二。
中一の文化祭でピーターパンをやった際に一番幼い男の子マイケルの役を抜擢された子。
でも、あの時は彼女が選ばれた理由は、見た目の雰囲気が小さな男の子を演じるのにぴったりだからだと思ってた。
でも違ったんです。
きっと、その時のオーディションも心を打つ演技をしたんでしょう。
下馬評には全く名前があがらなかったIさんを主役に決め、下馬評の2人は落選に。
たかだか学校の部活。そう思えば、舞台に立つチャンスはなるべく多くの部員に満遍なく与えるべきなんでしょう。
中二のIさんには、来年もある。しかも去年も舞台に出てる。
最後のチャンスである中3の2人から選ぶべきだったのかもしれない。
でも、その時の私には、たかだか部活ではなく、大切な舞台。
最高の舞台を作りたい。
だから、最高に演じられる人にキャスティングしました。
迷いなく、、、
そして、配役発表の日。
黒板に順に書いていきます。
アンの名前の横にIさんの名前が書かれた時のどよめき、、、、
どれ程、みんなが驚いたことか、、、
黒板に向かう私は背中で感じました。
こうして始まった文化祭への道のり。
下馬評を裏切った配役は中3の部員たちと私の間に大きなヒビを築きました。