ガットハロのブログ’混石’ -91ページ目

うるさい

 耳を割るような音を避けよう。それが私の音作りにおける至上命令である。音作り、というと何だか専門的な雰囲気がただよって気負いで鼻息が荒くなりそうだが、何のことはない、私が気にしているのはギターを鳴らすときにアンプのつまみをどう回すか、それだけである。


 それだけなのだが、ギターアンプの操り方というのは、ギターの弾き方と同じくらいにギタリストにとって重要ごとなのだ。だってほら、最高のギタリストを連れてきて最高の機材で最高の演奏をさせる時に、アンプのつまみを全部ゼロにしたら、最悪の音楽になるじゃないですか。て言うか聞こえないじゃないですか。全部のつまみを全開にしても同じく最悪じゃないですか。どうですか。試しちゃダメですよ、壊れちゃうから。耳が。


 ものすごく程度の低い例えを出してしまったが、最高の演奏を最悪の出来にしてしまえる恐ろしい箱を操ってギターを弾いている、というのは事実である。また、最悪と言わないまでも最悪に近い音は結構避けるのが難しい。ちょっと気を抜くとこのギターアンプ君は工事現場かパチンコ屋にでもにいる方がマシ、という音を出す。いや、そんな音にしているのは他ならぬ私なのだが。


 耳を割る、という表現が正しいのかどうかは知らないが、「ロック難聴」という単語も今どきかえって通りが悪い気がする。ライブハウスに限らず選挙の演説やら拡声器による体育教師の大声やらで、大音量のため耳が一時的に遠くなるあれだ。あの現象がロックバンドの練習スタジオではとても簡単に、そしてひんぱんに発生する。そしてその原因はほとんどの場合、ギターかボーカルだ。はい、ロックバンドのガットハロ、ギター兼ボーカル(仮)の宮下です。こんにちは。耳、大事にしてますか。


 ということで、メンバーの耳を割る男として悪名をはせる私だが、練習スタジオはもとより、ライブハウスに行ったことのある人なら知っていると思う。耳を割る男は体育教師や私だけではないと。


 会場の規模にもよるが、バンド形式のライブにおいては各楽器の音を出すアンプや楽器そのものにマイクを設置し、マイクが拾った音をミキサーに集めてバランスを揃え、大きなスピーカーで鳴らす。このマイクから始まり大きなスピーカーに至るまでの設備や技術を総称して俗に「PA(ピーエー)」と呼ぶ。


 で、ギター等アンプの音はPAで拡声、調整してくれるのだから一般家庭の屋内で鳴らす程度の音量で間に合うことになる。タテマエ上は。ということは、ライブ会場にて客が聞く音はミキサーによる調整を終えた大きなスピーカーからの音、すなわちPAを介した音のみであるが故、耳を割るような音にはならない。タテマエ上は。


 実際はどうか。耳が割れるのである。ライブハウスでいっちばん最初に出てきたバンドのいっちばん最初の一音で。


 先に「タテマエ」と言ったのは、まず実際にはギター等アンプの音量が一般家庭で鳴らせるようなかわいい音量でないからだ。これは通常ライブハウスで使用されているアンプ本体の大きさと聞こえる音色から言ってほぼ間違いない。次の「タテマエ」、ここは全く想像で書いてしまうが、PAシステムの終点、スピーカーからの音量も、耳を割る音量で出されているものと思われる。この少なくとも2つの事情により、ライブハウスに行くと必ず耳が割れる。


 大して調べもせずに文句をたれているようで各方面からお叱りを受けるのではないかとびくびくしているのだが、むしろお叱りを受けてみたいのかもしれないが、これは誰が悪いという話ではなさそうなのだ。部屋の大きさに対する音響設備の設置方法や演奏者の設定等、PA設置に関わる人に全く落ち度がないとしても耳を割る音は出ることになるのではないか、ということだ。以下は私の勝手な分析であり、全くの想像である。


1)客による吸音を期待して設置
 これは多少専門的な話なので私の知識では正しく語る術がないのだが、知る範囲でごくおおざっぱに言うと、「予想より客が少ないと予定より音が大きく響くので耳を割る」ということである。この点はその場で解決が可能だったりするかもしれないのでよくわからない。


2)客が耳を割ることを望む
 私がライブハウスに行って観るようなバンドは基本的にやかましい音楽を奏でる。やかましい音楽をわざわざ聴きに行っているのであり、これは他の客もご同様だろう。となると、やかましくないと困るのだ。木造アパートにおいて隣を気にせずいられるような慎ましい音量で演奏されてはライブハウスに行く意味がない。それなら多少耳の具合がナニしようとも大きな音で聴かせろ、とみんな思っており、PA関係者はその要望に応えているだけなのではないかなあ、と予想する。


 どうだろうか。結局のところ想像の域を出ないので、よくわからない。ただし、誰だって最初から耳をナニしたいワケではないと思うので、せめて「ギターが阿呆な音で鳴らし、ボーカルがバカみたいな大声を出しただけ」という理由で他人さまの耳を割るようなことのないよう、心を砕く日々なのである。


 以上、ギターの音をPAスピーカーから出す形式でのライブ経験がない素人バンドマン、宮下がお送りしました。小人閑居して妄想を為す。どうでもいいからライブを組んだ後にアレコレ考えろ。