リフレインが叫んでる
ラジオ、ケーブルテレビその他において、新進気鋭のミュージシャンや発売したばかりの楽曲を世に売り出すため、リクエスト曲やDJの選択する曲よりも頻繁に流される曲がある。これをパワープレイとかヘビーローテーションと呼ぶ。
このパワープレイ、テレビ番組におけるCMのようにいつの間にか人の脳内に棲みつく効果が確かにある。また、誰もが四六時中ラジオや音楽専門チャンネルを流しっぱなしにしている訳ではないので、たまたまつけたラジオやテレビで遭遇する曲になる可能性を高めるためにも必要な広告戦術なのだろう。
たった今誰もがつけっぱなしにしている訳でないと言ったが、つけっぱなしにしている人もいる。私だ。私の職場にはラジオがあり、一つの局を終日流しっぱなしにしている。例外は夏の高校野球で北海道代表が試合に出るか日ハムファイターズの優勝がかかっている試合の時くらいだ。そんなに野球好きだったのか我が社。
大抵は月替わりで移り行くパワープレイ楽曲たちだが、その月内は一時間に一回程の頻度で1コーラスまたは1曲まるまる放送されるため、いくら記憶野の性能に不備を感じる私でも各楽曲のアウトラインくらいは覚えてしまう。そして覚えた後も延々と曲は流れ続ける。この状況により生み出される効果の半分ほどは局側の意図通りだろうが、共に生じるもう半分の効果は予想できても意図はしていないはずだ。
はっきり言おう。聴きたくなくなるのだ。ひどいときにはラジオのアンテナを知恵の輪なみにひん曲げて受信不能にしてやろうか、とまで思う。仕事でひいひい言っている時に別れた男女が涙するやら信じれば必ず夢が叶うやら情感たっぷりに歌い上げられても「このヒマ人が」としか思えないのだ。
そんなささくれ立った私の神経を更に逆なですべくDJが楽曲及びミュージシャンの背景を語る。しまいには「チェックしてください」するもんか。ところでチェックって何だ。CD買うのをチェックって言うのか。夜のお店で「あ、ママさんチェックね」のアレか。チェックインか。チェックメイトか。チェックアズチェックキャンか。
少々取り乱してしまったことをお詫び申し上げる。ところで私のCD購入時期は「思いだした頃」である。そういえば2、3年前ラジオのパワープレイでかかってたあの曲、アレ何だっけ。まあネットで探せば見つかるっしょ。発見。そして購入。車で曲を流しつつああ、あの時は忙しかったから聴いててムカついたけど、いい曲ではないか。やはり私の耳に間違いはない。
どうだろうか。自分で書いてても思わず惚れてしまいそうなほどのロクデナシだ。私がパワープレイ発信当時のDJならこんな野郎の口にはありったけのCDをケースごと叩き込んで、腹には寿命間近のジュークボックスに向き合うディラン・マッケイよろしくヒザ蹴りをぶち込んでやることであろう。
このようにパワープレイは人の購買意欲に貢献している。しかし私ほど厚かましく感情の振れ幅を見せる人は少ないとしても、楽しくない状況において延々と流れた曲に拒絶反応を覚えるという経験なら誰しもあるのではないか。ひつこく繰り返されるただ1曲に限らず。
うちのベース、石川君はレゲエを聴かない。職場で一生分聴いたからだそうだ。次の一生分をまかなうかのように今も聴いていると。ロックバンド311(スリーイレブン)を気に入った私がその場の勢いで作ってしまった曲が'The Reggae' だが、作ったも何も原典たるレゲエのお約束フレーズあれこれを好き放題に切り貼りして歌謡曲にしちゃった、というワヤな構成である。
とは言えベースとドラムがそれなりにレゲエっていればレゲエに聴こえるはず、という身勝手な私の構想により参考としてボブ・マーリーやトリニティ、MINMIの曲を何曲か聴かせたところ、石川君は露骨にテンションが落ちた。
「あの、自分らの曲は一生懸命弾くからさ、参考の曲は聴かなくていいかな」
いや、私は良かれと思っただけでさ。君も311いいねって言ったじゃないか。別に聴かなくていいよ、ボブもMINMI も。マジになんなよ。アスタラビスタベイベー。
という訳でガットハロ、MySpaceで公開中のレゲエきどりな1曲'The Reggae'はタイトル同様、微妙に気合が抜けた出来上がりとなっている。真剣にやってはいるのだが。まあ、全てが思い出になった頃にレゲエが好きになってたりするかもしれないではないか。気長に待とう。
それを世間では「手遅れ」と呼ぶのだが。