Big Man With A Gun
もし私が他の人よりも遠くを見ているとしたら、それは巨人の肩の上に立っているからだ
これはたしかアイザック・ニュートンの言葉だったが、他にもロボット三原則を提唱したり最新の科学情報をグラフィカルに提供した雑誌を作ったりしているので、いまだご健在のようである。
分かりにくいボケ方をしてしまったが、上記のニュートンによる発言は先達の業績(巨人)に敬意を払うという意味合いであるそうで、イギリスのロックバンド、OASISのアルバムタイトルにまで引用されるくらい有名である。うがった見方をすれば、この言葉はある程度の偉業を成し遂げた人物が口にしない限り価値が激減するのであるが、そんな所も含めて魅力ある一言ではある。
グリーンデイというバンドがある。ある、というか'Basket Case'や'American Idiot'といった大ヒット曲をもつ人気バンドなので説明の必要もない気がするが、そのボーカル、ビリージョー・アームストロングがあるインタビューで「あなた方の曲はパンクロックなのにメロディとコーラスがとても美しいですね」といった讃辞に対し「ビートルズに感謝だね」と返答していた。うろおぼえなのであちこち間違っているかもしれないが、気の利いた返答として頭のすみっこに残っているのである。彼の言葉もまた、先人への敬意をあらわす一例であろう。
さて、私およびうちとこのバンドメンバーは腐ってるバンドマン、もとい腐ってもバンドマンなので自分らの曲を作る。そして弾く。そしてそれらオリジナル曲の原案を作っているのは主に私なのだが、私は音楽における理論をほとんど知らない。
そんな私を放し飼いにしているくらいなので他メンバーの音楽的な知識も限りなくゼロに近いと思われる。なんだか怖いしめんどくさいので確認はしていない。そんな団体がバンドのオリジナル曲でございとライブなんぞやらかしたりできるのがアマチュアバンドの素敵なところである。
かようにワヤな曲、というか音符のカタマリを書きちらして悦に入っている私ではあるものの、そんなことを5年ほども続けていれば演奏テクニックの名称やら音楽理論やらにお付き合いする機会も出てくる。そこで思うのが「何にでも名前がついているものであるなあ」ということである。
ギターの弾き方ひとつ取っても右手左手のミュートや、ハーモニクス、ピッキングハーモニクス、オクターブの各奏法、ハンマリング、プリング、チョーキング、ブラッシング、カッティング、サミング、バッティングと、最後はなにか不穏な物も混じったがとにかく細かく定義づけられており、やってみれば成程ちゃあんと違う音が出るのである。相手の目をつぶしたりまぶたを切ったりもできる、ってもうよせ私。
さあ音楽理論の各名称に及ぶともう手が付けられない。和声構造弱拍強拍短調長調進行スケールトニックドミナント。オンオフビートでるんたった。思わず千鳥足で歌いだした後もまだ続く。
現代音楽には必須とも言える、録音及び音響に関する知識だ。デジタルアナログシミュレーター、ミックスマスターモニター帯域周波数指向性ダイナミックコンデンサーファントムクリップ音圧レベル。単語の並べ方すらおざなりになってくるのであった。
これら山のような名前にはそれぞれ、現在の音楽界に通用する程度の正当な理屈とその理屈を考え出した人間が少なくとも名前の数だけ存在することになる。巨人だ。貧乏ゆすりしたら富士山が噴火するような地震が起こせるくらいの巨人だ。その大きさをなんとなし想像したところで私は飛ばした。
説明しよう。「飛ばす」とは古谷実著「僕といっしょ」に登場するダメ兄貴、先坂すぐ夫君の特殊技能で、手におえない状況に対し意識を宇宙へ飛ばし、その問題をなかったことにするという技のことだ。別名を現実逃避と言う。説明終わり。
意識を宇宙に飛ばした私が土星のリングでフリスビーをして遊び、地球に帰ってくる頃にはなぜか曲ができていた。これまでもそうだったしこれからもしばらくはそうだろう。そして私はその音源をメンバーに配り、さーあ、ほっかほかの新曲だよーう、と口にしたりはしないが顔はにやにやでスタジオに行くのだ。
せいぜい私にできるのは巨人に感謝することくらいである。自分が巨人の体のうちどこに乗せてもらい、何を見せてもらっているかもわかっちゃいないのだが、その風景を楽しんでいるのは確かなのだし。
という訳で、明けましてマイスペース に楽曲追加なのであるおめでとうございます。ボーカルが入ってないのには訳がある。その訳は。次回以降のいつかに続く。
だらだらと長話の末に無意味な引きを作るなよ。