ヨイトマケの唄
テクノロジーの進歩には驚くばかりですね。10~20万円の現金があれば自家製のCDアルバムが作れるのですよ。本格プロ志向。あなたも音楽業界をひっくり返してみませんか。
DTMである。デスクトップミュージックである。DAWもある。デジタルオーディオワークステーションなのだ。よくわからないが立派なスタジオにあるあのでっかいミキサーをいじるようなことがパソコンでできるソフト全般をそう呼ぶらしい。
この程度の事しか知らないのに教則本を片手にバンドのオリジナルCDを作っちゃったアラサーバンドマン宮下です。みなさんいかがお過ごしでしょうか。ところで「アラサー」って最近聞かないですね。
昔からパソコンにギターを録音したい、とは思っていた。そして試してみたことはある。パソコンのマイク入力端子にヘッドフォンをつなぎ、ギターの初心者セットについてくるあの小さなアンプの前に置く。ウィンドウズ95に常備されていた「サウンドレコーダー」の録音ボタンを押し、おもうさま弾く。弾く。停止ボタン押す。波形が画面上に映るので弾き始めまでと弾き終わりから後を目測および音を確認しつつカットする。
出来上がったWAVファイルを再生してみると、
「ざざーざっ ばさーーー てろでろれー ぶち」
とテレビの砂嵐をどうにか加工したような音が聞こえる。ひどい音だった。しかし私はご満悦だった。何曲かのリフを録音し、ウィンドウズの各動作音に設定したくらいにご満悦だった。一月ほど後にはうるさくて全部解除したが。ボタンを何か押すたんびにそれぞれちょっとだけちがうノイズが2、3秒ずつ流れるというのは、とても神経に障る。
ウィンドウを開くと 「ざざざ ざーざざー」
そのウィンドウを最大化すると 「ざざざざ ざざ ざざ ぶち」
大変ウザい。そんな訳で私は自分のギターを記録に残すことなどできないし、したくないという結論を下したのだった。しかし、Line6の赤い玉手箱、POD(Ver.2)で遊ぶようになって数年のち。私はひょんなことからある中古ソフトを入手した。
SOL2
世界のヤマハが提供するデジタルオーディオワークステーションである。たしか。当時でも既にCubaseシリーズに統合された後だったとかなんとか。多分。しかしオフラインで一人遊びな私のパソコンライフにおいてそんなことはなんの関係も無かった。インストールしてもさっぱりわからんがPODと合わせて自家製音源をどうにかできる道具だけはあるぜヤッホー。
ヤッホーはいいのだが、まずどこからも音が出ない。録音ができない。PDF形式の説明書は横文字だらけで私をからかっているのかという錯覚に襲われる。もう「だぶるくりっくってなあに」と電話してくる母を笑えない。なにせMIDIという単語が何を意味するのかイメージすらできなかったのだ。無謀のひとことである。
しかし、何もわからないながら表示される画面から、何かこう、すごいことができそうなソフトだという期待はあったので、私は本屋をめぐりどうにか2冊の教則本を購入し、だめだめパソコン教室の生徒になった。
そして2年半。いまだまともな楽曲のスコアを打ち込むのには20時間を要する。ギターとベースの録音は面倒で5~10分で終わらせてしまうのに。ミックスダウンにおいては各一回ずつパソコンのフリーズに見舞われる。ボーカルは悲しいくらいアレな私の声である。
しかし、出来た。どんなにアレでも、出来た。オリジナル全5曲。現在マイスペにアップしている数曲がその時作ったものである。そしてある時、作業中にミキサーのボリューム調整やエフェクターの選択をしながらにふと思う。
エンジニアじゃないか、私
どうだい、素人とかなんとかもう言わせないぜ。私にチャンネルセッテイングとボリュームバランスを語らせたらちょっとうるさいぜ。ああ、そこはダブリングにして右にちょっと振ってやったから音量小さめでも前に出てくれたよね、とか。
とは言え、やはり勉強はおこたらない。それがエンジニアの務めである。特にプロの現場で何が行われているのか、エンジニアとしてはインターネットで調べるくらいのことはしておかないとね。オーバー・ジ・アマチュアリズムっつーかぁ、ムハハ。
とまあ、勉強と勝手に銘打ったお得意のネットサーフィンでだらだらと、レコーディングエンジニアが現代のレコーディング事情について語っているウェブサイトを訪問する。そこで遭遇するのは、ため息まじりのこんな文章(うろ覚え)。
DTMの飛躍的な進化により、品質の高い音源を安価に作成する環境は整った。しかしそのおかげで機材を理解しないままパソコン上で何とか形にできてしまう人が増えた。趣味ならば結構だが、質の低いまま分かったつもりのプロとして現場に出て来る人がいて、面倒が多い。
あ、私だ。というか真面目に勉強した上でどうにか私のなれそうな姿だ。調子ですか、はい、こきました。ごめんなさい。
音源発表からバンドの躍進を目指す三十路バンドマン宮下。時に自分がどこを目指していたのか見失うこともある。それもまた人生。人生さておき、ぽこぽこと出来上がっていく音源は一体何の役に立っているのか。さあね。