ガットハロのブログ’混石’ -43ページ目

Closer (Precursor)

 その昔、テレビの中のアメリカ大統領を指して「俺ならガツンと言ってやるね」と息巻いたおっさんが、どうしたことか大統領の横に立たされた挙句大統領から「ガツンと言ってくれよ」と頼まれる、そんな缶コーヒーのCMがあった。


 このCMは調子こいてるおっさんを嗤うだけでなく、大舞台に臨むと私含む一般人がどうなってしまうかを感じられる点で今も印象深い。


 今挙げた例から「一般人は大舞台に弱い」という結論を出して終わりにできれば話は簡単なのだが、どうやらそれだけでもない。

HIDEに親しげに話しかけることができるなら、私はカーク・ハメットにタメ口きけると思う。


AGと気安く挨拶できるなら、私はチェスター・ベニントンと肩組んでハイチーズできると思う。


 突然だが、今、上の例に出した2名は、私とベースの石川がこよなく愛する札幌のインディーズバンド、NOISE MAKER のギターとボーカルだ。ちなみにカークは世界に名だたるメタル(ロック?)バンド、メタリカ のリードギターで、チェスターはオルタナ界の最メジャーという逆説的バンド、リンキンパーク のリードボーカルである。


 そこでNOISE MAKERだが、今ここを読んで下さっている方はどの程度NOISE MAKERの存在を知っているだろうか。ついでにメタリカと、リンキンパークも。私の口から言うのは実にアレなのだが、世界どころか日本国内の知名度から言ってもメタリカやリンキンパークに比べNOISE MAKERは明らかにマイナー、だと思う。


 ならば、そんなマイナーな、近所のライブハウスでひんぱんに出演するインディーズバンドのメンバーに声をかけるのは、大した緊張を伴わないはずではないか。そうでないか。どうよ。どうなのよ。


 声を、かけられないのだ。全く。これっぽっちも。「ハイ、ガイズ」「今日もカマしてくれよ」はおろか、「ファンです」の一言も、言えん。


 NOISE MAKERの出演する某日、某ライブハウスにて。そこはステージ袖というものが存在しないライブハウスであり、出演者は客含む全員が使う出入口から楽器を抱えて客の間を縫い、ステージに立つ。つまりAGもHIDEもYU-KI(Bass)もUTA(Drums)も私の目の前を当然のようにウロウロする。


 はい、声はかけられません。その代わりにそわそわしながら腕組んでタバコふかしちゃったりして。昔懐かしヤンキーかお前は。いやいやちょっと待て今考えてんだよ。よし考えた。


 何かしらのとっかかりがあれば話もスムーズではないか、そう思い、いや欲しかったんだけども、物販の売り子をしていたAGからCDを買ってみる。


「ありがとうございます、札幌の人ですか」
「いや、恵庭です」
「そうですか、本当にありがとうございます」
「いやこちらこそ」


 そして握手。いやーんマジで。AGと握手しちゃったー。いやいや喜び方キモいぞ…で、終わり。


 って、話始めも何もアナタ、握手以外は相手がどっかそこらの店員さんでもかまわんくらいの話じゃん。何やってんの。ナニヤッテンノ。初めてのナンパで何も言えんと何故か道をたずねてその場でお別れしちゃった大学生かお前は。


 とか何とか心の古傷をぐりぐりして壁とお話ししたり、演奏観ながら「うぃしゅかんばー」とか(※1)言ってる内にライブ終了。ライブハウスを出よう、とした時。どうしたことか目の前にHIDEが登場。うわあ。


 …という顔のまま階段を降りる私。おーい。おおーい。何かないんかーい。何がしたいねーん。ヘーイ。ヘェーイ。


 以前問題にした距離感 とは別種だが、これもまた、距離感と呼べるのではないか。自分の脳内世界においてヒーローとなっている人間には、近づきがたい。平たく言えばビビる。ある分野のスターを見た人が言う所の「オーラがある」というのもこの辺のビビり感によるものではないだろうか。


 つまりNOISE MAKERは音楽ジャンルやライブの形において理想に限りなく近い物を見せてくれると私が勝手に思っているが故、その本人達を目の前にするとビビってしまうのではないか、ということである。


 この考え方ではスター本人がオーラを発しているのではなく、全ては感じる側の勝手な思い込みとも言えてしまうが、たくさんの人にそう感じさせてしまうほどの人間をスターと呼ぶ、と考えればどっちゃでもいんでないの、とも思う。


 そんな小難しい考えをごちゃごちゃとこねくり回すヒマがあったらコミュニケーションの取り方をもう少し考えるべきだろうと自省しつつ、そんな反省も家に帰ってから壁に向かって一人でぼそぼそとやっているだけなのであった。もちろん今のところ改善の見込みはない。





助けてくれ


俺がお前を神に近づける(※2)




※重要性に乏しい注釈。
1)We should come back . 「難しくないから」よい子のみんなもライブ会場で歌おう。


2)歌詞の無茶引用ふたたび。ちなみに今回タイトルはNine Inch Nailsの'closer'のリミックスより。映画「セブン」オープニングに使われてたよ。