ガットハロのブログ’混石’ -41ページ目

Englishman in New York

 英語はかっこいい。なんでも英語で言えば俄然かっこいい物になる。例えば。


「まあ、とってもおしゃれな時計」
「すてきなデザインクロックね」


 どうだろう。後者の方がぬぬ、お主デザインクロックとやらにも劣らぬオシャレさんだな、と思ってしまいそうではないか。


 他にも「木目がきれいで落ち着いた雰囲気でしょう」より「ナチュラルカラーでシックなイメージでしょう」「選挙公約」より「マニフェスト」「かっこいい曲」より「ホットなチューン」「携帯電話」より「ケータイ」「可愛い」より「カワイイ」とまあ挙げればキリがない。


 かくしてかっこ良く違ったクールにしたければ英語にしてしまえという流行いやムーブメントも、現代ではすっかり定着じゃなくフィックスしている。美しい日本語なんていう言葉が一過性だったように、いちいち難癖をつけたり指摘なんてする方がヤボだ、という空気すら感じる。違ったフィーリングだWohWohWoh泣かないわ。


 ここでハイ・ファイ・セットと関係なく、話は横滑りする。「ネイティブな発音で国際的な英会話を」という目標が掲げられて久しい。なんでも小学校まで英語が会話を中心に必修科目になったとかどうとかで、国民の本気度も相当に高いようである。小学生、ご両親、先生方ほか関係各位におかれてはご苦労様です。


 私個人の仕事や生活の上では今のところ、ありがたいことに英会話の必要性をまあ、全くと言っていいほど感じない。よって「それおっちゃんおばちゃんが自己実現の一端を子供に託してるだけじゃねえの」とか「次はピアノのおけいこを必修にしちゃえ」とかろくでもないことを言い出すので私に英会話と教育を語らせるべきではない。


 というような暴言は後難がおっかないので忘れてくださいお願い。で、忘れた後もさらに話は転がって5年ほど前、ある雑貨屋さんでのこと。私はCDを物色していた。


 何故に雑貨屋さんでCDが売っているかと言うとその店が総合書店だからというステキな理由では全然なく、そこは北海道でも今どき珍しいほどのド田舎でありジャポニカ学習帳から懐中電灯からお線香からなんでも売ってた中にCDも売っていたのであり、何故にそんなド田舎に私がいたのかというと仕事の出張でそこにいたのでありそのド田舎では夜になるとなーんもやることがなくてそんな店でも貴重だったのであり、こんなところで状況説明はよろしいか。ぜえぜえ。


 そのお店で私は何ぞ掘り出し物でもないものか、掘り出し物ではなくとも旅先の無聊を慰める何物かが見つからぬものかと、ぶらぶら歩きながら並ぶCDを眺める。


 通常、CDの並べ方はアーティスト順になっており、ご多分に洩れずその店もアーティスト名を記載した札の間にCDが並んでいた。その札というのが田舎に限らず結構ある話だが、手書きの紙切れであった。ここまでは一応普通だ。


 ここからもその、普通なのだろうか、どうだろう。私見ではあまり普通でないアーティスト名が目に入った。


エブリリトルスウィング


 ELTである。わかる。知ってるよ。Every Little Thingな。それはよいが、その表記はそれでオッケーなのか。スウィングである。北海道の片田舎で黒人のグルーヴである。あるいは余計なことを考えずに振り抜く感じである。はい肩の力を抜いてっ。スウィングっ。スウィングっ。ほらほら常に小さく構えてっ。エブリリトル、スウィングっ。


 いやまあ、小暮閣下の首でも取ったように大騒ぎするほどのことではない。手紙だって昔「レタア」だったもんが「レター」に変わってもだれも笑っとらんぞ、車屋なんか今でも「ボデー」塗装しとるがな、と言ってしまえばその通り。当世「シング」と表記する単語を「スウィング」としたところで誰に文句をつけられるいわれもない、気もする。


 私とて人もまばらな夜の店内で突然笑いだしてむやみに店主の不興をかうのは望まない訳で、その時その場にいた私にしかわからない笑いの発作を抑えつつ、店を出ることにした。その時。目の端を何かがかすめた。何だなんだ。今度は何だというのだ。


 そこには寡聞にして私の知らぬ名があった。居るのかもしれない。そういう奴らがイルノカモシレナイ。どうなのか。私としては知ってる方がいたら是非ご一報いただきたい、そんな珍しい名前。


134A


 あの、棚のそこんとこはCDが品切れで、アーティスト名の札だけだったんですけど、まさか、いやいくらなんでも、まさかとは思いますが、その、本当は「175R」なのでは、「イナゴライダー」のことなのでは、ない、ですよねえ。


 ニヤケ面で逃げるように店を出た私には、今やただの勘違いであったかどうかすら確かめる術もなく。ただ、英語は話すのも書くのも難しいねえとか何とか的を外した感想と共に、これにてThat's all for today。バイバイ御免なのであった。