ガットハロのブログ’混石’ -18ページ目

The Bitter End

 来るのだ。


 何がって、勧誘が。ピンポン押して。新聞とか、新聞とか、宗教とか、あと新聞とか。これも一種の「暖かくなると増えるのよねえ」の類だという気がしてきているが、そんな失敬な感想はさておいて。


 まず個人的立場を明確にしよう。私は今のところ新たに新聞を取る気はない。新たな宗教に入信する予定もない。しかし、新聞エコくないから無くなっちゃえとか、宗教ナウくないから滅んじゃえとか、そこまで明確な主張もない。大方の一般市民はこんなもんだと思うがどうか。


 だいたい以上から、勧誘めんどいから来ないでほしいけどなんか申し訳なくて恨みもないモヤっとした私の心を酌んでいただけると嬉しいが、そんなことをここでぼそぼそ言ったところで来るものは来る。来るので私も断る。そして私もいい加減大人の男の人なので、やんわり断る。


 最近お気にの断り文句が「今料理中なので」だ。仮にケロッグコーンフロスティに「ぐぅれいとぉ」とか言いながら牛乳を注いでいるだけだとしても料理中。本棚の文庫本を作者別から出版社別に整頓し直してる時でも料理中。もう一刻を争う感じ。超一流の食材に火が通るかナマかのギリギリ攻めてるとこだから勘弁して、みたいな。


 で、二人組の若めな女の人が宗教の勧誘に来たときもそうした。その日はナベを火にかけてる設定。「ちょっと説明を」「あ、今料理中で」「では冊子を」「すんません吹きこぼれちゃうから」「そうですか」「ええもう、え、もうホント申し訳ない」終わり。


 今回は比較的早めに終わった。よしよし。鍵をかけておしまい。だが、ここでもうひとつ気をつかう場所がある。鍵をかけるタイミングだ。


鍵かける音を聞かせたくない。


 どうだろう。私の仕事柄や経験上知り得る範囲において、そのへん気遣う人と気にしない人は半々くらいだとにらんでいるが、とにかく私は出て行く人の背後で「がっちゃ」と鍵をかける音を聞かれるのはなんだか嫌だ。だって招かれざる客だと表明してるっぽいから。それだとやんわり断ったの全部オジャンな気がするから。


 ということで、ゆっくりゆっくり、時間をおいて鍵をかけようさあ閉めるかなと、その時、去り行く二人の会話がドア越しで耳に入った。


「なんだか面白い人でしたね」
「ふふふ」


えー?えー!?ちょっと待って。ちょいとお待ちよ。


 どこさ。どこ面白かったのさ。なにその『挙動不審な一般人を笑顔で見逃してあげた』的発言。勘違いしないで、さっきのやりとり終始私の支配下だったから。「そんなもんいらんから帰れ」とか言うよりずっとマイルドな断り方。あれ全て私のテクだから。わかってんのいやわかってないあーもーあーもー呼び止めたいドアばーん開けて呼び止めたい玄関フードがーん開いて吼えたい。


 嵐のようなものが吹き荒れる心をどうにか静め、鍵をかける。そして思う。


よし、ならば次は電話中という設定でいこう。


「あ、今すっごい電話中ですんませんホントすんません(家の中振り返って)あー、ちょっと待ってくださいねー!」


 なんも改善してないな。