ガットハロのブログ’混石’ -17ページ目

タイトでキュートなヒップがシュールなジョークとムードでテレフォンナンバー

《釧路沖サーモンのマリネ 七つの海の宝石仕立て新鮮なオレンジの香りを纏ったフランス産モリーユ茸を添えて》

 料理名でなんか、文章になったやつがある。フレンチかイタリーかそのあたりの料理を日本で食す際にお会いしている、はずだ。


 記憶をたどれば結婚披露宴や記念式典など、そういったフォーマルな場で時折見かけて、そして気にしてはいたはずだが、最初にこの手の長ーい料理名に目を留めたきっかけはテレビのバラエティ番組だったかも知れない。ゴチバトルとか。


 西洋料理においては、材料や調理法を列記してメニューに記すやりかたがあるらしい。とにかく使った食材を全部、調理法も全部、味付けはこうで、と書き記したものが、お品書きになるということだ。


 なるほどわかりやすいと言えばそうだ。どんなものが頂けるのか一目瞭然である。鶏と卵の丼を頼んだつもりがシャケとイクラを山盛り平らげる羽目になったりはしない。へへへおもろいやろ的な店主の顔を恨めしく眺めることもない。


 ただここで気になるのは、列記する「だけ」が条件だとするとあの文章は何だい、ということだ。つまりその、助詞はともかく形容詞、ええもう言ってしまえ、七つの海の宝石だの、香りを纏っただのの文言は、日本の、シェフのお茶目によるのですか。


 どうなのそこんとこ。店じまいした後の厨房とかホールとかでレポート用紙片手に天(井)を仰ぎ生みの苦しみをにじませつつ歩き回りながら詩的なフレーズを考えてるのだろうかどうなのさ。


 いや、文句は無い。むしろメニュー表を見せられた時に『サーモン、オレンジ、モリーユ茸、マリネ、ワックス、かける、ワックス、ふく』とかなっているとあんまり美味しくなさそうだ。いつの間にかミヤギさんのパンチが受け流せたりして。あるいはつられてカタコトになる。「オレ、これ、食う、まず、ワイン、よこせ、ロゼ、くれ」困りますお客様。


 これに対し、クラシック音楽の曲名には実に無骨なものがある。話題転換の無骨さはさておくとして、無骨な曲名とは例えば、ピアノソナタ第5番とか、交響曲第9番とかいうアレだ。


 これら曲名は、当然のなりゆきとして他の曲とカブりまくっているので、専門家ですら作曲者の名前を付記せねば本当に何の曲かわからないはずだ。後に曲名でググる人や、フィギュアスケート見て曲名うろおぼえでレコード店に走る人のことを考えなかったのだろうか。


 そんなことは考えなくてよいが、ポピュラーミュージックに親しんだ身として不親切な曲名に感じるのは確かだ。まあそれを言うなら「Love Song」や「It's my life」などの曲名とて同名タイトルが多数あってそれほど親切ではない。してみると楽曲の形式や作曲者から曲を類推できる曲名も、これはこれで便利なのだろう。


 ところがここに、せっかく納得した私とあなたを惑わすノイズが入る。


交響曲第6番「悲愴」
交響曲第38番「プラハ」
ピアノ協奏曲第5番「皇帝」


 そう、副題だ。これがまた、付いてたり付いてなかったり、本人が付けたならまだしもいつの間にか誰かしらに呼び習わされて出所のはっきりしないものから、ベートーヴェンの「運命」のように他の国では呼ばない通称まで、まーあまとまりがないったら。


 何だかんだいって、これはやはり、印象に頼った曲名を人が欲しているということなのであろう。更に各種ジャンルの曲名を眺め渡すに、なるたけカブらず、印象深い言葉を用いたタイトルは、いつの時代も楽曲に求められているのではないだろうか。


 と、むりやりまとめつつも最後にいつもどおり、余計なことをする。どんなことか。ロックのとある曲について、勝手にかの命名方式を採用してみるのである。さあ、何の曲かおわかりになるだろうか。


まずは料理風で。
《ライド16分から基音5度でかき鳴らされるギターとオクターブを絡めたベースラインを追いかけて轟き渡る叫びと共にABAC#のリフが炸裂したあの頃ジョナサンはまだしも痩せていた(※)》


次はクラシック曲風に。
《弦打楽歌曲集第1番の1ニ短調(※)》



解答は以下のリンクを参照のこと。


[PV(Youtube)]

[DISCOGRAPHY(Wikipedia)]

 上記リンク先で確認できる曲名は、あくまで副題または通称であるという、そんな気分でご確認されると、より深い味わいをお楽しみいただけます。では本日はここまで。曲タイトルの奥深い世界、いかがでしたか?


 ……いや、だから何なのさと言われても。私でなくシェフか作曲家に訊いていただきたい。何とか言ってベートーヴェン。





(※)筆者は調性ほか音楽全般についての正確な知識を持ち合わせていません。なんとなくのデマカセです。『弦打楽歌曲』とかワヤな単語でそのへんお察しください。当然、文中の料理名についても同様です。