ワインライダー・フォーエバー | ガットハロのブログ’混石’

ワインライダー・フォーエバー

「ロックスターが夢でした」


中古品屋さんには、ギターもある。たくさんある。


その(多分)全ては、以前ギタリストが所有していた物である。


その(多分)大多数は、このギターで格好よくキメてやろう、という野望の元に購入された物である。


野望の果つる地、夢の跡へようこそ。

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 ここは近所の総合中古屋(そんな呼び名はないが)。やたら後ろ向きなイントロで、以前もここでヒネた話をしている気がするが、別に中古品を商う店に恨みがあるわけではない。この日私は、パソコンのプリンターケーブルを手軽に買うため、この店に来たのだ。


 目下捜索中なのはケーブルであって楽器への物欲が休暇中だというのに、せっかく来たのだからと並ぶギターたちを見ていて、ふと上のような寂しい考えが浮かんでしまった。私個人が何か寂しかった訳ではない。いや本当に。


 その中古屋では楽器の品揃えも豊富で、ちょっとした間に合わせの道具がうまいこと見つかることもある。よってちょくちょく足を運ぶのだが、改めてギターのみを見てみると、まこと雑多な品揃えだ。


 「Rock'n' Roll」とか「fuck you」とか書かれたシールがべたべたと貼り付けられているテレキャスター、ふるふると震えるタッチでイギリス国旗のペイントを施されたグレッチ、なんとボディにたどたどしい鷲の彫刻が施されたレスポール(型)。ファイトいっぱつか。タウリンめっちゃ入ってる感じか。


 他には弦が錆っさびの状態で、何本かは弦自体張ってないものやら、それ以前にトレモロブリッジが歯抜けのようになってまず弦が張れないなんてものもあり、「部品欠損につき値引き」とか書いてわきに寄せられていたりする。弦は別に部品欠損ではないと思うが。


 だから中古屋さんに文句をつけているのではないのだ。特にギターに彫り込まれた鷲なぞ売った人間のヤンチャな行いのせいなのだから、中古屋さんには全く責任がない。欠損だってもちろん売られた時点で弦が切れたり歯っ欠けだったりしたのであろう。…っと、あったあった、ケーブル。100円ですか。いいんですかこんなお値段で。ありがとう中古屋さん。


 さて、買い物を終えたのちまた楽器売り場をぶらぶらしながら考えたのであるが、ここで興味があるのは、売る理由である。


 買うときの理由は、大雑把に言ってそのギターが楽器のギターとして必要だったからである。オブジェとしては…何だかちょっとありそうだが、カラスよけにぶらさげるとかバットの代わりとかで買う人はあまりいないと思う。これに対し売るときの理由は、もう少しばらけるのではないだろうか。思いつく範囲ではこんなところ。


状態1「ギターは必要だが、この品物はいらない」
新しくギターを買った、ひどい故障で直せない(売るなよ)、等


状態2「ギター自体必要ない」
もうバンドって歳でもない、ギターを弾くことが今は楽しくない、等


状態3「ギターは必要だが、環境がそれを許さない」
生活に困ってこれを売った金であと数日をしのぐしかないそもそも俺の家はこれを置いておくと寝る場所もないくらい狭くってうちの子が寝返りをうつと倒れたギターで頭蓋骨が陥没してしまうかもしれない嗚呼どうしようもないんだ許してくれ祟らないでくださいあれれ貴方のうしろにもキツネがほら、等


 最後は調子に乗り過ぎたが、私は生活に困った人からBassPODという機材を買い取ったことがあるので、例に挙げてみた。


1)良い物や高い物は一生使えるから最初に良い物や高い物を買え。
2)初心者に良し悪しなどわからないのだから、それなりの値段で買え。
3)良いか悪いかは、人によって違うのだから、あなたの感性で買え。


 以上1)~3)は、私がこれまで聞いた「失敗しないギター購入について」の主だった意見である。なお、「失敗しない」購入つまり成功の定義には、「一生付き合うギターを見つける」くらいのステキな出会いも含まれるであろう。


 が、中古品たちを目の前にしてみると、どの意見も正しくないような気になってしまう。中古品たちは、最初に購入される際、上の意見やその他なにかしらの意図によって選ばれ、なにほどかの意志を持つ誰かの所有物であったのだから。


 品揃え(数十万円の高級品とか)から想像するに、とてつもなく意志の弱いばか者がほいほいと買って大した努力もせずにぽいと売った、ということばかりでもどうやら、無い。ならば、どの主張を優先したいかなる楽器だって手放すことはあり得る。


 いやまあつまり何が言いたいかって、ギターをはじめ楽器購入にあたっては自分に都合のいい情報だけ信じ、「どうせいつかは売る」くらいのつもりで気楽に買っちゃえば終始ハッピーでいられるのじゃなかろうかと、そんなことを思ったよ、という話。偉そうですねごめんなさい。