GUITARHYTHM
ロボが好きだった。ガンダム、バイファム、パトレイバー。これらのプラモデルが欲しくて、小銭をにぎりながら近所にある駄菓子屋兼おもちゃ屋の佐藤商店をうろついたものである。
リアルな芝のジオラマを作るのに青のりを使うとか汚しの塗装用に筆の先を切ってぼかし筆を作るとか1/144ジオングには1/100ドムの足がぴったりでこれを称してパーフェクトジオングとか、何でこんな人生に欠片も役立たないことをまだ覚えているのか不思議なのだが、まあそんなことに夢中な全力少年だったわけである。世界は開けそうもない。
それと関係あるのかどうか、私はギターをあまり楽器だと思っていないフシがある。厳密には、ギターの性能のうち「音を鳴らす」というのはオマケの性能、どうかすると、たまたま音が出るだけだ、と考えているところがあるのだ。
何を言っているのか。こんなことを島村楽器店内で口にした日にはお客さんと店員さんからそろって袋叩きにされそうだが、理由を聞いていただきたい。
ギターは本当にあの形が究極なのか、ということである。
いやまあ、だっておかしいじゃないの。どうしてどれもこれも22フレットか24フレットなのよさ。どうしてみんな弦の数が6本か7本なのだね。ピックアップは絶対にあのボン、キュッ、ボンの形をしたボディのあの辺にくっついてないといけないっつう理由なんかあるんかいな。
何を難癖つけやがって。こんなことをTWO-FIVE店内で口にした日には、まあ、みんなからナニされそうだが、あの、ちょっと待って。まあ聞いて。
ギターがあの形なのはかっこいいからであって音は二の次なんじゃないの、ということである。
いやまあ、だってさ、もうそれなりにいい音が出る上にだよ。ジミヘンやらペイジやら藤原やらがいてさ、「あんな風になりたい」って人の方が「より素晴らしいギターサウンドを」って人よか絶対多いはずでさ。でもってギターの形もさ、あれ格好いいじゃん。仮にだよ、ネックがあの半分くらいに短くなってボディが倍くらいの大きさになったらさ、ちょっと愛せないじゃないのさ。ねえ、何を睨んでる、の、ですか。
とまあ、調子に乗ってふざけ倒してしまったが、ちょっとだけ要約すると以下の点が気になるのだ。
1) ギターは音質の面から言って今の機能が最高か
2) ギターは弾きやすさの面から言って今の形状が最高か
3) 上記2点は最善でなく向上させることは可能だが、あまりに異質な形状になるとかっこ悪いので大幅な改良はあえて行っていないのではないか
突然だが、映画の「28日後…」をご存知か。ゾンビ、ではないがそのようなことになった人間が全力ダッシュで追いかけてくるシーンのみが個人的にお気に入りな作品だが、お気に入りとはいっても、私はあんな世界に放り込まれたくはない。断固拒否である。当たり前だべや。だれがあんな生き物から逃げ回ったあげく首筋をかじられて幸薄き人生を終えたいものか。考えるだけでワクワク、違ったブルブルである。
ゾンビ(みたいなもの)にかじられて、というのは死に方として最悪の部類だとは思うが、それ以外でもわりかし簡単に人は死んでしまう。車にぶつかってもおっかない兄さんにしこたま殴られてもでかいサメに食われても人は死ぬ。そして、空き缶か何かに回路を詰め込んでピックアップを付け、空け口にでも弦を張り、アンプにつないで弦をはじけばエレキギターの音は出る。
最後にさりげなく無茶な例えが出た。そう、私が言いたかったのはこれである。例に挙げたように全く形が違う、しかしギターとしてとても良い音の妙な物体が発売されたとして、人は買うのか、ということだ。
オモチャとしてなら少しは売れそうな気もする。エアギターなる芸能(?)が流行ったことがあるが、その節はギターのネックの一部をかたどったモノから録音済の曲が流れだすという、本来の目的を見失ったけったいなオモチャもあったことだし、そしてちょっと触ってみたいと思った私もいることだし、好事家の目には留まるだろう。
だが楽器屋に5万円くらいで置いてあったらどうか。店員さんが10万円クラスのギターと同等の音質を保証するとして。
売れないと思うのである。私は買わない。なぜか。高いクセにかっこ悪いからだ。すっかり別の楽器になってしまうと演奏を覚えるのが大変だとかそんな次元の高い話ではない。ダサイからだ。そう、私は、ロボット工学の粋を集めたナニガシよりガンダムが好きな全力青年(または中年)なのだから。
さあ結論。ギターが売れる理由は音質、弾きやすさのみに非ず。かっこいいからだ。異論反論には全力を以て反論し返す所存である。いらんよ、そんな所存。