ハマッテシマッタ | ガットハロのブログ’混石’

ハマッテシマッタ

 思い込み、という言葉には本来あまりいい意味はない。視野の狭さ故の強い意志、という面でよいこととされる場合もあるが、視野が狭いということ自体が世間一般に推奨される状態ではないのである。


 私の思い込みはこうだ。


わざわざインディーズのバンドを好きだと言うことは音楽の質に関係などなく、趣味を他人と差別化、つまりは自らの個性とやらを主張する手段にすぎない。


 高校や大学で知り合う人の中には「音楽は誰よりも愛してるけどさ、メジャーに今聴く価値のあるバンドなんてないね」と公言し、インディーズのCDばかり探し求める人種が結構いた。ひと昔前は。ひと昔。あああそうですとも。もう10年も前の話で何の参考にもなりませんけれども。私ももう三十路ですけれども。


 だけれども私は思ったものでしたよ、10年前。そんな店であんまり置いてないものわざわざ探し回って何の得があんだよと。言ってしまいそうになりましたよ、ひと昔前。そのバンドはレアでもあんたはレアじゃねえよと。フツーに売れてる曲の何が分かってんだよと。私も分かってないけれどもずいぶん昔。ええ昔。そーんなこともーあーったよねーえぇ。


 思わず我を忘れて騒いでしまったが、そんなちょぼい反発心のおかげで私はインディーズの曲に触れず過ごしてきた。そして1年と少し前、雪どけのある日。バンドらしき団体を組んでスタジオにちょいちょいと顔を出していた私は、何の準備もないまま「ライブでもやってみたいねえ。どんな事になるのかねえ」とベースの石川君に言った。彼は東京のライブハウスにぽちぽちと出演していたアマチュアバンドマンだったのでその手の事情にある程度通じているものと期待して出した話題である。


「じゃあ、ライブハウス行ってみる?」


 ああそうですね。「偵察」ってやつですか先生。分かりました師匠。自分がライブハウスの日程調べてみまっす。と、それから何もしないまま2ヶ月。我ながら呆れる怠けっぷりだがそんな私に一度CDを買っただけなのにメールでライブ情報を送ってくれるステキバンドがあった。


HEADPHONES PRESIDENT


 札幌のクラブ'Sound Lab mole 'にてライブ。これだ。行ってみましょうではないですか。そうだった、「偵察」でしたよ石川老師。すっかり忘れてました。


 ここで知ってる人は言うだろう。なんだよヘッドフォンプレジデントだってインディーズ所属だべや、と。まあその辺の事情については、その昔アイバニーズのカタログを手に取ったら彼らの名前が載っててああだこうだと話は長くなるので割愛したほうがお互いのためであり、知らなかったよ奴らがインディーズだったなんてごにょごにょ。


 で、割愛したのちに本題に戻ると、このライブ、対バン形式だったのである。他の出演は聞いたこともない札幌のインディーズバンド。ただしこの時も私は他のバンドに興味を持ってはいなかった。まあ、いんでないすか。3,000円でたくさんバンド見れるならお得だし、嫌なら他のは見なきゃいいんだし、とか思っていたのである。


 して当日。我が神聖なるお仕事の都合により遅刻ぎみでmoleに到着。すでにドアからは爆音が漏れ出している。でもまあ、ヘッドフォンプレジデントは最後だろうし、のんびり行こうやと中に入る。


 結論から言おう。私の悪しき思い込みが一つ、解消された。この時より私は札幌のインディーズバンドにひとかたならぬ興味を持って生活している。ただ単に好きなバンドとしてだ。あと、この日遅刻したがために全ての演奏を見られなかったことを今でも後悔している。かように我が手のひらをひっくり返したのは誰か。


鉞(マサカリ)
アシュラシンドローム


 彼らである。知ってる人は彼らのステキぶりに強く同意されたし。知らない人は私が首に縄をかけて差し上げるので観るのだコンチクショウ。とてもかっこいいぞ札幌インディーズバンド。メジャーとかインディーズとかもうどうでもいいや。そんなことよりNOISEMAKER のライブは次にどこで。SONS OF NEW SCHOOL のCDはもう売ってるのか。探せさがせ。


 大体にしてだ。安く(\1,000~\3,000)て近く(札幌市内地下鉄から徒歩10分以内)て楽に(入場から30分でスタート)観られるライブハウスを差し置いてなぜみんな苦労して札幌ドームやら石狩湾新港やらに行くのかわからぬ。なぜ\5,000からのチケット代を払っておきながら開始まで1時間も2時間も待てるのだ。国道36号線と5号線と地下鉄東西線と東豊線と南北線を軒並み大混雑にして。そんな騒ぎを起こしてる暇があったらライブハウスに行け。ここには真の音楽があるのだああっ。


 常に我々の視野を狭める思い込み。それを全くのゼロにすることなど不可能である。偏見は一つ解けたらまたひとつ。10年前には予想もしない、三十路を迎えてマイブームはインディーズバンド観覧。おまけに行ったこともない夏フェス批判。もしもライジングサンに行ったなら私はどう変身するのか。尻軽ロッカー宮下は流されやすさに定評あり。


 いつかきみと出会い話しあうなら、そんな時はどうか「信念」の意味をおしえてください。


 ところで「偵察」だったよな、出演する話じゃなかったか、というようなヤボは言わないように。