10月の日本経済新聞のコラム「私の履歴書」は、バイオリニストの前橋汀子さんで、今日が最終回でした。
昔のニューヨーク在住の話などとても興味深かく、とても面白かったです。
「私の履歴書」は1人の人が1カ月にわたって毎日自分の人生を書き綴るコラムです。
私は汀子さんというユニークな名前から、存在だけは存じ上げていましたが、どういう方か、バイオリニストであることさえも知りませんでした。
それで朝の通勤電車でスマホで私の履歴書を読みながらいい時代になったなと思ったことがひとつ。
前橋さんは、
バッハの「無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ」 は、バイオリニストにとってバイブルのような作品で、バイオリンのあらゆる技巧が網羅されていて、どこまでも探求したくなる曲で、音符には書かれていない行間の部分に深遠な背景がある、演奏家のその時のすべてが表れる作品、
と書いていました。
そうすると、クラッシック音楽を全く知らない私でもどんな曲なのか聞いてみたくなりますよね。
だけど今だと、スマホで検索すればものの10-20秒でその曲が聞けちゃう。
すごいいい時代だなあと感心しました。
バッハの無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータを聞きながら出勤しました。
目をつぶって聞いても音楽音痴の私には行間の深遠な背景が思い浮かびませんが、
それでもスタンリー・キューブリックの1975年の映画「バリー・リンドン」で描かれた中世ヨーロッパの農村を取り囲む丘陵の風景が浮かび上がってきました。せかせかした通勤時間が癒しの時間になりました。
前橋さんは私の履歴書の中で、
“電車から吐き出されてくる人の波を見てふと思ったことがある。「この中にクラシックのコンサートに足を運んだことのある人が何人いるだろう」 一人でも多くの方に生の演奏を聴いてほしい”
と書いておられましたが、
コラムを通じて、ど素人の私が一瞬で無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータを拝聴する機会をつくってくださいました。
恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」を読んだ時も、
作中にいろんなピアノの曲が出てきて、
それが丁寧に描写されてるわけですが、
音楽が全くわからない私にはちんぷんかんぷん。
そんな時はスマホで検索して実際に聞くと、作中の描写がイメージとして湧いてくるんです。
いい時代ですね。