金融市場でリスク回避の兆し、金利急上昇でファンド勢が苦戦か | 5階で働くディーラー達

金融市場でリスク回避の兆し、金利急上昇でファンド勢が苦戦か

[東京 11日 ロイター] 世界的な規模で起こった金利上昇で、債券市場で損失を抱えたファンド勢が他のポジションを処分して損失の穴埋めをする可能性が指摘されている。

 

市場では、最高値を更新していた米株が売られ、最安値圏で推移する円が小幅に買い戻されるなど、リスク回避と見られる動きも出始めている。

 

<米債利回りが5年ぶり水準へ上昇、中国売りのうわさ絶えず>

 

米債市場では利下げ観測の後退をきっかけとする売りが続き、8日の取引で10年債利回りは一時5.25%まで上昇。約5年ぶり水準をつけた。今回の米債売りは「行き過ぎた米景気の悲観論の後退」(外銀)との見方が一般的。10年債利回りがわずか1カ月で4.6%付近から急激に上昇したことで、市場では「運用に失敗したところがあるとのうわさ」(市場筋)が債券売りに拍車をかけたとの観測がくすぶっている。


 

現在のところ、市場では、前週にドイツ銀行がデリバティブ(金融派生商品)で損失を出したとのうわさが流れ、同行関係筋が否定コメントを出した程度で、ファンドや金融機関の損失は表面化していない。しかし、米金融政策に不透明感がくすぶる中、米債市場では10年債利回りが5%を突破する前に売買が激しく交錯し「4.8%付近では買い向かったところが多かった」(外銀関係者)ため、その後の金利上昇で損失を抱えた向きが「いてもまったくおかしくない」(別の外銀)状況だ。


 同時に、景況感の回復が手掛かりとされる米金利上昇の背景に、中国の影を指摘する声も多い。米金利が上昇基調を強める直前の先月18日、中国政府が外貨準備のうち30億ドルを米プライベートエクイティ大手のブラックストーン・グループ[BG.UL]に拠出、海外投資を開始したとの発表に、ある債券市場の関係者は困惑した。これまで中国は人民元の介入で大量に米債を買い上げてきたが、運用を大きく多様化させることは米債の買い手不在にもつながりかねない。「米債は売りだ。長い目でみれば、大相場になる可能性もある」として、その後も米債市場では、中国売りのうわさが絶えないという。


 <米金利一段の上昇、株安加わればリスク回避の動き急に>

 

急ピッチの米金利上昇が続き、一段の上昇への懸念が強まる中、金融市場では既に、リスク回避と見られる動きも出始めている。マネーの流通経路である為替市場では、これまで高金利通貨として選好されてきたユーロ、英ポンドが対ドルで2カ月ぶり安値を更新。


30年ぶり高値を更新したカナダドルや変動相場以降後の最高値を更新したNZドルが高値圏で伸び悩んでおり、高金利通貨から資金が流出する形跡を指摘する声が出ている。


 海外ファンドの為替決済を担当する関係者は「債券ファンドのポートフォリオがだいぶ痛んでいるようだ。一部がダメージコントロールの益出しに動いている」と指摘する。


 金利上昇と平仄(ひょうそく)をあわせ、高値路線を歩んできた米株にも暗雲が立ち込めている。当初は米景気の復調見込みが買い手がかりとなったものの、急速な金利上昇が住宅や銀行セクターなどの業績悪化懸念につながり、米株関連の主要指数は7日までの3日間で2月の世界同時株安以来の下げ幅を記録した。8日には小幅切り返したものの、ファンドの益出し売り観測がくすぶる中で金利上昇が続けば、株安リスクは一段と大きくなりかねない。


 リスク回避の兆しは円相場にも現れている。低金利かつ高い流動性を持つ円は、キャリー取引向け通貨に最適とされ売り圧力が強まり、高金利のユーロや英ポンドなどに対して大きく売られてきたが、前週後半から今週にかけては買い戻しが先行。円の値動きそのものも、円の取引量が多いアジア時間は特に「アジア株が上がれば円は(キャリー取引再開期待で)売りで、下がれば(リスク回避の円買い戻しが強まるため)買い」(外資系証券)と、株価と相関性の高い状況が続いている。



 市場では「米債売りはだいぶ一巡感が出てきたようで、株の下げも最近の上昇の調整程度」(都銀ストラテジスト)として、大きくリスク回避に市場が傾くリスクはまだ小さいとの見方が大勢だ。今月末にかけては米系ファンドの半期決算シーズンにあたり、ポジションが縮小されやすいことが米株伸び悩みの一因とする見方もある。ただ、その水面下で静かにリスク回避シナリオをにらんだ動きが進んでいる可能性は否定できない。