それから何日も経ったある日、
ジェボムヒョンたちの部屋から少し物音が聞こえてきて、僕は目を覚ました。途切れ途切れに聞こえるヒョンの声。何が起きてる?
そして最後に耳を澄ますと聞こえた声
「ごめんな、悪い」
ジェボムヒョンの低くて暗い、声
気になって少しリビングを覗いてみると、ジェボムヒョンは電気もつけずにただイスに座っていた。すると聞こえてくるヨンジェの嗚咽
それが聞こえたからなのか、ベランダへと足を進めたヒョン。泣いてるんだと、直感で分かった
何が起きたのかなんて細かくは分からないけど、2人の関係が壊れたという事はわかった。僕は望んでたはずだ、2人がこうなる事を。それなのに、なんでこんな気持ちになる?
結局僕は何をしたかったのか、自分でもわからない。だけど自分が犯した過ちでヒョンが苦しんでること、それだけはわかる。僕は本当にバカだ
ヒョンがリビングに帰ってくるとき、僕は自分がそこにいたことを知られないようにもう一度部屋のドアを閉めた。
苦しい、苦しくてたまらない。好きな人が苦しむ姿は、自分が苦しむよりも辛く、悲しいという事に今更気づいたのだ
それから何十分か経って気持ちを落ち着けるために、水を飲みに行こうとリビングに向かった。暗がりの中、手探りで歩いて行くと突如ついた明かり
「……マークヒョン」
「なんで泣いてる?」
涙が頬を伝い、床にぽたりとシミを付けた。こうして、ジェボムヒョンも涙を流していたのかな?
「……辛いから」
全ての感情とともに溢れだす涙
マークヒョンは何も言わないで僕を抱きしめた
「言って、何でも聞くから。俺はジニョンが何て言ったって受け止めるから」
僕は、誰かに慰めてもらえるような立場の人間じゃないのに。何でこんなに優しくするの?
「マークヒョン……」
僕は全ての事をマークヒョンに話した。僕がジェボムヒョンを好きなことも、全部、全部……
マークヒョンは何も言わずに僕の背中をさすり続けてくれた。僕を罵ることもせず、動揺することも無く、ただただ話を聞いてくれた
「僕、最低だ」
最後に呟いた言葉。別に慰めてもらいたくて言ったわけじゃなかった
「そっか。ジニョン、それは確かに良い事とは言えないかもね」
そう言うとマークヒョンは僕の背中をさすっていた手を止め、少し考えるように吐息を漏らした
「でも、好きになったらそうなるのが普通じゃない?別にジニョンを庇ってるわけじゃないけど」
チラリとマークヒョンを見ると何とも言えない瞳で、どこか遠くを見つめているように見えた。その綺麗な瞳には、何が映されているのだろう
「俺もそういう気持ち分からなくもないし。どうしても振り向かせたいって気持ちが強かっただけでしょ?俺だって、好きな人の事になればそれぐらいしたくなっちゃうよ」
はは、と自嘲気味に笑った後、マークヒョンは優しく僕を見つめた
「……俺だって、それぐらいしたくなっちゃうよ」
切なげに響いたその声
何かを伝えたがってるような、そんな意味深な表情。2人とも話さなくなり、沈黙になったところでヒョンは言った
「何かあったら俺の事頼っていいから」
僕の頭をポンポンと撫でると、マークヒョンはこちらを向かないまま席を立った。それに続くように僕も席を立つ
「電気消すから」
そして電気が消えた時、僕はマークヒョンのパジャマの袖を掴んだ
「……ヒョン、ありがとうございます」
暗闇に目が慣れていないせいか、表情は全く見えなかった。でも、何となく表情が想像できる気がした
「いいえ」
やっぱり切なげに響く声。マークヒョンは僕の手をそっと外させると、部屋の方へと向かって行ったようだった
なんでそんなに悲しそうな、切なげな目をするの?なんでそんなに寂しそうなの?なんでそんなに僕の事を気遣うの?
もしかして……僕と同じなの?