「それで?」
ヨンジェは表情を変えないまま問うた。
今、俺の事どう思ってるんだろう?
汚い奴?怖い奴?人間の底辺?答えを聞くのが怖くて、俺はヨンジェより先に話を切り出した。
「ヨンジェ、俺は……」
「それで?続きを言ってください、話は後です」
俺に反論する権利はないようだ。あまりにも真剣な目で言ってくるから、続きを話さざるを得なくなってしまった。
「途中まで大学に通ってたみたいなんだけど、ある時全部忘れたみたいなんだ、今まであったこと全部」
そして、俺は自嘲気味に笑った
「……それで、俺が覚えてることは3つ。1つは、俺は何らかの犯罪を犯してるって事。もう1つは、警察に追われてるって事」
そう言った瞬間にヨンジェは俯き、独り言のように呟いた
「だからあの時……」
そう、自分自身が分からなくなったあの日。
ヨンジェを傷つけた、あの日。
俺は自分の犯した罪の重さに絶望した。この日からだった、俺がこの家を出ようと思いだしたのは。
「ごめんな、ヨンジェ。謝るだけじゃ済まないって分かってるけど」
苦しくて、仕方ないんだ。好きで好きでたまらないお前を傷つけたんだと思うと苦しいんだよ
ヨンジェは何も言わずに首を横に振った
「それともう1つは……」
言いかけたところで、言うべきか迷った、が。ヨンジェは全てを話してくれた。俺が全部を話さないのはフェアじゃない。だから、俺も言うよ
「お前と同じで……俺も弟と死別してる」
俯けていた顔を俺の方に向け、ヨンジェは目を見開いた。沈黙を先に破ったのは俺だった
「俺のせいで、なんだって。記憶を失ってるせいかよく分からないけど。父親に言われた。俺のせいで弟は死んだんだ、って」
無性に何かを口に含みたくなって。目の前に置いてあったコーヒーを一気に喉に流し込んだ。ゴクリと飲みこむと、俺はまた続けた
「普通の俺だったら、人の家になんて長居しないはずだ。俺がこの家にこれだけ長い間いたのはきっと……俺もヨンジェを弟と重ねてたからなのかもしれない」
俺はヨンジェの目を真っ直ぐに見た。ヨンジェも真っ直ぐに俺を見つめている。そして少し間を空け、こう言った
「それだけじゃない、俺はいつの間にか……」
いや、言わない方がいいだろう。言ったらきっと、もっと離れられなくなる。けど、俺が思っている事とは裏腹に勝手に口が動いていた
「ヨンジェを好きになってた」
やっと言えたというのに、すぐに後悔の波が押し寄せた。こんな事言っても何もならないのに。
俺は、犯罪者なのに。俺たちは男同士という前提があるのに。俺たちには越えなければいけない障害が多すぎるのだ
「ごめん、今の……」
忘れてくれ、と言いたかったのに
「ジェボムヒョンも、僕の事が好きなの?」
「ヨンジェ」
「好きなの?」
ヨンジェは目に涙をためている
その顔は、本当に反則だ
「あぁ、好きだよ」
そんな顔で言われたら抑えきれなくなるんだよ、お前への気持ちを。
言いたくなるんだよ、好きだって