目が覚めると、いつもと同じ寝室の電気が俺を照らしていた。
「ジェボムヒョン!やっと起きたんですね、良かった……」
俺のベットの隣に膝をついたまま、ヨンジェは俺の手を強く握った。今にも泣きだしそうな顔をしている
「何、俺が死ぬかと思ってた?」
ゆっくりと起き上がると、やっぱりまだ少し頭痛はするが、今さっきよりはいくらかマシになっていた。
「心配かけてごめんな」
少し意識が朦朧としている気がするが、今はどうでも良かった。そう言った瞬間に、綺麗な雫がヨンジェの頬を伝った。
「泣くなよ」
俺はヨンジェの涙を指ですくい取った
「ヒョンが、いなくなっちゃうかと思って。また、僕の大切な人がいなくなっちゃうのかなって思ったら辛くて……」
嗚咽を漏らしながら肩を震わせているヨンジェ。『また』多分ヨンジェの兄の事を言っているんだろう。ヨンジェは今までにどれだけ辛い思いをしてきたのだろうか。表には出していないだけで、俺よりもずっと辛かったのかもしれない
「お母さんも居なくなって、最初に育ててくれたお父さんも今どこにいるのか分からないし、お兄ちゃんもいなくなって……僕の大切な人は、みんな僕の側から離れていくんだ。だから……ジェボムヒョンも」
「俺はお前の側から絶対に離れたりしない」
話を遮り、俺は言い放つ
「ずっとお前の側に居るから」
ベットから降り、ヨンジェと目線を合わせる
愛おしいその瞳の中に、俺の姿が映る
「本当ですか?」
「あぁ」
俺はヨンジェをきつく抱きしめた。さ今までになかったぐらい、強く強く。
「大好きだよ、ヨンジェ」
「僕も……ジェボムヒョンが大好きです。」
今まで頭痛で倒れていたとは思えないぐらいの回復力だった。これもきっとヨンジェのおかげかもしれない。
ただ、一つ気になることがある。それは、ヨンジェの言っていた「最初に育ててくれたお父さん」という言葉だ。「最初に」という事は、もう一人父親がいるのだろうか。母親はきっと亡くなっているのだろう。いつごろか「今日はお母さんの命日だ」と言っていたことがあった。
俺は全部話したつもりだったけど、ヨンジェにはまだ隠されている秘密があるのかもしれない。でも俺にそれを聞く権利はない。だからヨンジェが自分の口からまた話してくれるのを待とうと思った。
ヨンジェは毎日の様にバイトに行っては外の様子を俺に伝えてくれた
「今日はジャクソンさんが……」
「昨日来てくれたお客さんが……」
「買い物に行ったら……」
その内容は様々だったが、いつからかその話が俺を不安にさせるようになっていった
もしかしたらヨンジェはもっと外で自由に暮らしたいのかもしれない。いつからか俺のもとを離れていくんじゃないか、と。
「ジャク……」
またジャクソンの話
「なぁ、ヨンジェ」
「はい?」
「お前は俺から離れたりしないよな?」
俺には今のヨンジェの心が読めない
それが、怖い
「当たり前じゃないですか」
怖くて怖くて、仕方ない
「じゃあさ、もうバイト辞めろよ」
「へ……?」
ヨンジェはきょとんとした顔で俺を見つめた。そして俺の方にづかづかと歩いてくる
「待ってください、なんでヒョンに……」
「俺から離れたいのか?そんなに外に行きたいのか?俺の事が好きじゃない?」
狂気じみてる。今の俺は、完全に狂ってる。
「ヒョン、ちょっと疲れてるんじゃないですか?今日は早く寝……」
「俺、ヨンジェがいなくなったら生きてけない」
ヨンジェは困ったように俯いた。
そう、もうお前なしでは生きてけないよ。
狂おしいほどに愛してる
「バイト辞めたら、ヒョンの不安もなくなる?」
「あぁ」
泣きそうな目が、辞めたくないことを物語っている。でも、俺はもう止められない。
お前を愛しすぎてるが故にこうなるんだよ。
許してくれ、ヨンジェ