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「ジニョン先輩」
「ん?」
捜査を始めて何週間か経ったある日の事
「今日一緒にご飯でも行きませんか?」
べムべムからご飯に誘われた。あの日僕が何かを探していることがばれてから、心なしか前より話しかけられるようになった気がする。
「今日はちょっと……」
断ろうとしたその時
「大事な話があるんです。」
なんて前のめりになって言ってくるから、断るにも断れなくなってしまった
「わかった、じゃあ仕事終わったら行こうか」
「はい!」
僕に何の話があるって言うんだ。ただ興味半分で僕の事を探られても困るだけなのに。もうこれ以上僕とは関わらない方がいいのに
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それからヨンジェがバイトに行くことは全くなくなった。いつの間にか俺の不安もどこかに消えていた。ヨンジェは時折悲しそうな顔をするが、その顔さえ愛おしく思えるのだ
「今日のお昼ご飯、何にしますか?」
気づけばもう12時を過ぎていた時計。ヨンジェはテレビを消してそう言った
「何でもいいけど……あ、ヨンジェ、ピザ好きだろ?ピザでも頼むか。」
今日はいつもよりも機嫌が良かった。それは、ヨンジェと一日中一緒に居れるから。
「わ!ピザですか!やったー!じゃあ僕はテリヤキチキンで!じゃあもう頼みますよ?」
子どものように喜んで、ヨンジェは電話の受話器を取った。一通り注文が終わると、ニコニコして俺の方に駆けよる。
「ヒョン、ありがとうございます!あと20分ぐらいで来るそうです」
お前はどんな時でも、どんな姿でも可愛いよ。
「ん、そんなに嬉しかった?」
「はい!」
ほんと、憎いほど可愛い奴。
いつの間にか20分が経ったのか家のインターホンが鳴った。僕が行ってきます、と言ってドアを開けたヨンジェ
「宅配……ヨンジェ!?」
それとともに聞こえてくる、誰か知らない男の声
「ユ、ギョム……」
「ヨンジェ、こんなところで何してるの!?何も言わずに大学辞めて」
「ユギョム、しっ……」
玄関の外には。長身にサラッとした金髪、その髪色とは似使わない優しい顔をしている少年が立っていた。この男は、誰だ。
「誰?」
「あ、ジェボムヒョン……」
俺が出てきたことに驚いているのか、ユギョムという男は口を噤んだ
「えっと、大学時代の同級生です……」
怪しい人間を見るかのようにユギョムという男は俺を見つめてくる。そんな汚い人間を見ているような目でこっちを見るなよ。わかってる、俺が汚い人間だってことぐらい。
「あ、届けてくれてありがとう。これ代金。お釣りとかいらないから。」
そう言って俺は玄関のドアを勢いよく閉めた。もう一度インターホンが鳴るが、それには応えなかった
「ユギョム?」
「だから、大学の……」
「アイツはお前の何なの」
嫉妬心が、芽生える。また、外の世界に行きたいってお前の瞳が言ってる。
「ただの友達です!言ったじゃないですか」
お前がどこかに行くなんて、考えられない。お前がいない世界なんて、俺には何の意味もない。どこにも、行くな。
「お前は俺から離れない?」
俺はいつの間にか、ヨンジェの腕を握っていた
「離れません」
「本当に?」
「ヒョン、痛いです……」
少し震えながら、ヨンジェは俺に訴えた。いつの間にか握っていた手に力がこもっていてヨンジェの腕に赤い跡を残した。
その痕を見て、少し我に返る
「……ごめん」
自分でも分からない。何故こんなにも執着しているのか。何故こんなにも愛しているのか。
でも愛にも執着にも、元々意味なんてモノは存在していなかったのかもしれない。