号泣…サラブレッド、ショコラの命を繋いだみんなの想い | り

こんにちは



ドラマみたいな日だった。



こんなに誰かを想うなんて、
胸が張り裂けそうな現実を受け入れなくてはいけないなんて




そんな一日。



その場にいた人にしかわからないかもしれないけど
記録用に残しておきます。





ショコラが来て3日目。





性格はものすごく穏やか。
元々競走馬として人が乗っていた馬だったこともあり
とてつもなくいい子

もちろん調教されているし人馴れもしている。



馬場の外周もすんなり歩く
外のグレーチング部分も問題なくクリア!!!
いきなりこれって凄いこと。


※馬はマンホールとか
グレーチングとか黒ぽいものは穴に見えるようで
慣れていない馬だと怖くて渡れない




オーナーも、「この馬は化けるよ〜」と
かなり期待値高めで夫もわたしもワクワクしていた。



馬場に戻って鞍と頭絡着けるとものすごく落ち着いたような表情。


寧ろ着けていた方がより落ち着いているイメージ。
きっと競走馬時代に着けて過ごしていたからなのかなあとか。





まさに、優等生!!!





こんだけいい馬だと
乗ったらどんな馬になるんだろう。
オーナーも夫もわたしも胸が高鳴る。




一番最初に乗るのはもちろんオーナー!


最初なので慣れさせるために
鞍に体重をかけて重さになれさせる。



しかしここで予期せぬトラブル発生




体重をかけると馬の腰が砕けて足がよろめく。


何度試しても同じ。


普通なら100kgくらいなら余裕で耐えられるのに。


何かがおかしい…



この時点で薄らと嫌な予感が…



他の人がやれば何か変わるかもと
夫アンヘル氏もゆっくりと体重をかけてみる


……


それでも腰が砕けてしまってよろめく。
そして明らかに痛そう。



まさかまさか、
ここまで驚くほど順調だったのに馬に不調??



足を痛めているだけならまだ助かる術はある


けど、もしも、万が一、腰が原因だとしたら

治る見込みは限りなくゼロ




オーナーはあちこち電話をかけて
獣医さんやら詳しい人たちに電話して聞いていた。




症状からしておそらく神経がやられているだろうと。
その場合沖縄で適切な治療をすることは難しい。


それは
絶望を意味していた。




ショコラは
お客さんを乗せる為に引き取った馬。
そんな馬が人を乗せることができない。



ダメ元ですごく軽く腰の部分を押しても
腰が砕けてとても痛がる。





馬はものすごく維持費がかかる。



オーナーはショコラをどうするか決断を迫られていた。



出た答えは
「どうしようもない。元いた場所に返そう。」
オーナー、すごく苦しそうだった。




実は、
ショコラは競走馬を引退して
元々馬肉になる予定の馬を引き取った馬。



つまり、「元いた場所に返す」ということは
死を意味していた。







「ショコラのこと、ここにいさせてあげてほしい!!!」



そう叫びたかった。



だけど、
手伝いにホースファームに来ているだけ何のリスクも負っていないわたしたちにはそんな発言をする権利はないしどうすることもできない。


できることは現実を受け止めることだけ。





「18時に迎えが来ます」



1時間前まではワクワクしながら
ショコラ達と過ごしていたのに…

たった数時間で地獄に堕とされたような気分。



けど、
一番辛いのはオーナーだと思う。




3日間と言えど物凄く濃密な時間を過ごした。


気付けば彼はかけがえのない存在になっていた。
この先も当たり前のようにずっと一緒にいれると思っていたし、
海を一緒に歩いたりお客さん乗せたり
そんな未来が訪れると思っていた。






わたしは無になろうと必死だった。
涙を堪えていたいから。




抗うことの出来ない現実だけど何とかして
受け入れるしかない。





迎えのトラックが来る時間が刻々と迫ってくる。



オーナーが
「最後にご飯あげよう」



トラックに乗っている時お腹が空いたらかわいそうだからというオーナーの愛情。

朝からふやかしていたキューブをあげた。


まるで最期の晩餐みたい。。。


けど、ショコラも察していたのか
全然ご飯食べないの。


この時から涙腺は崩壊しかけていた。



馬場に入ってそれぞれの時間を
ショコラと過ごしていた。





わたしもショコラと過ごした。
彼の瞳を見た時長い時間目が合っていた。



ショコラは全てを悟っている瞳をしていた。
これからどんな運命が待ち受けているのかもわかっていた。



どこか切なくて
そして優しくて
これから先起こることを受け入れているような
そんな瞳をしていた。

どれくらい目を合わせていたか分からない。



ショコラの目を見てから涙腺は決壊した。
号泣した。
涙が止まらなかった。




ショコラはわたしの側にぴったりついてくれていた。
頭を少し下げて静かに静かに時が流れるのを過ごしていた。


わたしがショコラの側にいてあげたかったのに
ショコラがわたしの側にいて慰さめてくれていた。



神様はなんて残酷なんだと思った。
こんなに優しくて有能な馬なのに…




それと同時に
ショコラが来世では幸せになりますように
祈り続けた。



そのあとは夫がショコラと過ごしていた。
遠くから見ていたけど
寄り添うふたりの姿を見て余計に泣けた。




馬は言葉を喋らないけど
人のちょっとした感情の変化とか
その場の空気感とか
いろんなものを読み取れる能力があると言われているけど。

今日確信した。
話せなくても意思疎通は確実に出来る。



オーナーもショコラと静かに
向かい合って過ごして会話していた。

その背中はとても切なさで溢れていた。



まさかこんな結果になるなんて誰も思っていなかった。



そのあと
オーナーの奥さんも到着した。


みんなそれぞれいろんな感情に向き合っていた。


もう30分としないうちに18時になる。

神様、お願いだからどうか時間を止めてください

これほどまでにそう思ったことはななった。



もう時間がない…そんなふうに思っていた時


「やっぱりやめた。うちで引き取ろう」
と言ったらしい。

迎えのトラックもキャンセルした。



この時わたしは馬場でショコラといた。

ショコラに、もう大丈夫だよ!心配ないよ!
此処でこの先も暮らせるよ!!!!

首を抱き寄せて想いを精一杯伝えた。



ホースファームは
「乗馬」をする場所なのに
人を乗せるのは恐らく不可能に近い馬。


それなのに引き取ることを選択したオーナーの決断。
オーナーの決意と深い愛情を感じたし
残すという賭けに出てくれたオーナーに感謝の気持ちでいっぱいになった。



「ショコラが此処に来てくれたのも何か意味があると思うから」

だから、残すことにしたと。


後から知った話だけど
オーナーの奥さんも


「せっかく来た馬なのだから残してあげてほしい」
とオーナーに話してくれていたらしい。



みんなの想いが重なって
オーナーが大きな決断をしてくれたおかげで
ショコラはホースファームに残ることになった。






「人は乗せられないけど腰に負担がかからない馬車なら引けると思う。」


馬車はロンズーさんが既に
注文してくれているとのこと。


鞍を着けて人を乗せることは難しいけど
馬車を引いて人を乗せることはできる。



そして、ショコラの瞳はどの馬よりも優しい。
すごく温かくて優しく包み込んでくれるような
そんな瞳をしている。


サラブレッドでは珍しいけども
ホースセラピーの馬としても活躍してくれそう。



新しい道が開けた。




少し前まですごく静かにしていたショコラは
最後にヒヒーンと鳴いた。


「ありがとう救ってくれて」って言ってるんだよって奥さんが言ってた。


わたしもそんな気がした。




安心したら身体中の力が抜けて
疲れと安堵感と、一緒に過ごせる喜びと
いろんな感情がぐちゃぐちゃになっていた。

何かを乗り越えた感じ。



ショコラとの絆も深まった。

たった一日で絶望感哀しみ苦しさ嬉しさいろんな感情を体験したドラマみたいな一日でした。







リサト