耳の話 その16 国立時代(2) | 小迫良成の【歌ブログ】

小迫良成の【歌ブログ】

「唱歌是生活的乐趣(歌は人生の喜び)」
「有歌声的生活(歌と共に歩む人生)」
 この言葉を心の銘と刻み込み
 歌の世界に生きてきた
 或る音楽家の心の記憶

国立音楽大学1年次、

”オンケル”という愛称で親しまれ

毎週の飲み会の仕掛け人でもあった菅原君から

レコードプレーヤーとアンプを譲ってもらった私は、

圧倒的に不足していると感じてた

クラシック曲の知見を補うため、

都心に出る度に掘り出し物を求めて

中古レコード屋を巡るようになった。

 

主な猟場は高田馬場とお茶の水、

ほかに池袋や国立などで、

日曜に個人レッスンを受けに

江古田に出かけた日は

そのまま池袋から丸の内線で

お茶の水まで足を延ばし、

梶井基次郎「檸檬」で有名な

丸善の裏手にある「ディスクユニオン」で

安い輸入盤の中古を物色するまでが

ルーチンになっていた。

 

まあ貧乏の上に"ど”がつくほどの

貧乏学生だったので

実際にLPを手に入れるのは

月に数枚がせいぜいだったが、

それでも当時はマイナーレーベルが

それ程には流通しておらず、

デッカ(ロンドン)やグラモフォン、

エンジェル(EMI)あたりの

「名盤」と呼ばれるレコードが

かなり安価に入手できたのは嬉しかった。

 

マリア・カラスにステファノ、

ロス・アンヘレス、スコット、

ジェームス・キングにコレッリ、

クラウスにニルソン、ゲッダ、etc...

そうした歴史に名を残す

名歌手たちの演奏音源を

手に入れては片っ端から聴きまくり、

オペラの世界と

その世界に君臨する歌手たちの

演奏がどのようなものか、

自分なりにその世界を

把握しようとしたのである。

 

 

そうした折、

国立音大の同期ながら

既に藤原歌劇団に出入りしていた

とあるソプラノから

「演奏会に出演するので観に来てくれ」

と頼まれた。

 

ちょうどオペラに

興味を注いでいた時期でもあり

出演者のほとんどが

二期会や藤原の会員・団員クラスだというので

「日本のプロの演奏も直に見てみたい」

と食指が動き快諾したのだが、

チケットを貰わないまま

本番当日になってしまった。

 

携帯もなければメールもなく

裕福な学生でもなければ

電話すら部屋になかった時代のこと、

連絡の取りようもなく

仕方がないので公演会場に行き

当日券を買って入場した。

 

(続)

 

※記憶が間違っていたので訂正します。

 件の彼女が出演する「フィガロの結婚」

 公演については、また頁をあらためて。(2024.2.7)

 

※写真は当時高田馬場のレコード店で貰ったポスター