梅雨時に風呂に入っていなかったので、3日程同じ服を着ていた。
風呂に入ると、酸っぱいような膿のような臭いがした。体の汚れが落ちてそんな臭いがしたのだと思う。そうなるまで風呂に入れなかった事は今までに普通にある。頭が痒く、悪夢を行ったり来たり、人の声が無機質な音になり、それにどこか何か話し相手のような安らぎを求める物のある、不毛で苦しい時間。誰もそんな事は知らず、明るい声で話して通り過ぎていく。
今自分が異常な環境にいるとは思っていない。小学生の時からいた話し相手が、頭の中にいないからだ。正確には、長い間話していないために疎遠になって、住む場所が遠退いた。
外人の、眉毛のないモナリザに似た女性で、いつも長くて黒い服を着ていた。
一人で帰るとき、学校にいる時、孤独を感じると話す。声を出して話す。
一人の中に世界を作って、そこにいた。
今はどうしているのだろう。素晴らしい夕焼けに雲の影が彫刻の滑らかな線を型どっている綺麗な空の下で暮らしている。
彼女を遠ざけたのは、理由は覚えていない。気味悪がられたか、人に興味を持てと言われたからか、あまり積極的にでなかった。
彼女を受け入れてくれなかった事が、そのまま自分を受け入れてくれなかった事に繋がり、他人の不幸一切に同情出来なくなり、深い部分に反感を抱く自分が今出来上がっている。
自分をここまで追い詰めて精神的苦痛を強いて、自分たちはのうのうと生きている、そう思うと、誰にも興味を持てない。
あの夕焼けの下、掘っ立て小屋に住んでいる女性を受け入れてくれはしないのでしょう。
それならどんなにかわいそうな人も、どんなに正しい人も、自分の目には映さない。
これが自分の絶対の掟で、自分にもどうしようも出来ない事。
全ての人はあの世界で足下をざわめく物言わぬ草や石でしかないと、自分は今生きてはいられない。