前回はBRAVIAの基本機能であるテレビとしての能力をレビューしました。
テレビとして見ている内はあまり気にならない事ですが、
映画や音楽を聴いているとどうしても気になってくるのが音質面です。
BRABIA KDL-32EX300にはソニーが長年の間をかけて熟成させた
デジタルアンプ技術の「S‐MASTER」が搭載されています。
実はどの液晶テレビも省電力を競うために、最近ではこぞってデジタルアンプを採用しているのですが、
普通のデジタルアンプでは電力的なメリットはあっても、肝心な音質が悪かったりしてしまうのです。
その評価は力感がないとか、高音の表現が貧弱である等、欠点が指摘される事も多く、
主にカーオーディオやウーハーでの採用等が一般的でした。
しかし、ソニーの「S-MASTER」は初めは高級オーディオで採用されるぐらいでしたが、
開発されてから20年が経過した最近においては、ウォークマンやシアターシステムに搭載されるなど低価格化
が進み、何とこのBRAVIAでも採用されてしまうという、
何ともオイシイ事態となっているのです。
では、その「S-MASTER」はどういった点が優れているのでしょうか。
デジタルアンプは、文字通りデジタルであるPCM信号を
アナログ信号に変換するDAコンバーターなのですが、そのアナログ信号をデジタルのまま増幅できる点がメリットです。
DAコンバーターの宿命としては、発生するパルス信号が純度が高く、ジッタが少ない事が望ましいのですが、
「S-MASTER」はこの課題をソニー独自の技術でクリアしています。
図のC-PLMでパルスデーターは位相データーで打ち消しあい正確な物として生成され、
相互的に働きかけるS-TACTがジッタの少ない美しいオーディオ信号を紡ぎ出すのです。
そして生まれたその音質は、DSPで無理に作った様な臨場感ではなく、
高域の澄み渡り感が素晴らしく、ツルンとした音離れの良い再生音で、
どこまでもリアルな美しいステレオイメージが見える濃密な素晴らしい世界を繰り広げるのです。
デジタルアンプのメリットを本当に実感できるシステムこそが「S-MASTER」なのです。
では、実際に「S-MASTER」搭載のBRAVIA 32EX300の音を聞いてみましょう。
これがまた実に悪い音質です^^;
それもそのはず、テレビに内蔵されているスピーカーは小口径であり、
アンプもそれに合わせて10W程度の小型の物です。
アナログテレビ時代のような奥行きも無いのでスピーカーボックスの容量も限られてしまう為、
音の厚みや低音感が皆無なのです。
また、スピーカーの鳴る方向がテレビの底へ向けられているのですが、私の家のラックは
棒状の隙間のある物なので音が全く反射せずに抜け落ちてしまいます。
よって、明瞭感も広がり感も無い音となってしまいました。
しかし、普通に鳴らせてもこのままでは全く普通のテレビであって、
「S-MASTER」があるメリットを感じる事は到底出来ません。
そこで以前から考えていたTOPPING TP21をブラビアの音声出力につなげます。
アナログのRCAをこの価格のテレビで搭載しているのはBRAVIAだけ。
SONYの心遣いに感謝の気持ちを持ちながら、B&WのDM600 S3を接続します。
そしてSTINGのアンプラグド・ライブのDVDを視聴して見ました。
すると何ということでしょう。
今までのTP-21とDM600 S3との組み合わせでは聞けなかった、
思いがけないほどの素晴らしい音質がそこにはあったのです。
私はしばらく呆然となってしばらくその音質に聞き惚れてしまいました。
アコースティックギターの美しい響きや、ライブ会場の臨場感が、
その場所にいるかのような熱気を持って再生されていました。
以前はそのDVDをテクニクスのSU-A70とDM600 S3で聞いたことはありますが、
普通に良い音だとは感じましたが、その臨場感に感動した記憶はありませんでした。
しかし、BRAVIAの液晶テレビを経由した音質-というか、「S-MASTER」を通った今回の音質は
ハッとするほどのリアルな現実感を持った音離れの良い物でした。
これはあくまでも私の推察ですが、実際に音を聞いた感想としては、
BRAVIAの「S-MASTER」を経由した音質はプリアンプとしてかなり高い能力を持っていると思われます。
DVDとBRAVIAまではHDMIケーブルで接続されていますが、この間はデジタル接続となっています。
DVDから送られたデジタル信号は劣化することなく「S-MASTER」で純度の高いパルスデーターを生成して、
ジッタの無い美しいアナログ信号を紡ぎます。
そのアナログ信号はTP-21へと流れるのですが、TP-21の高域再現能力は5千円の中華製アンプでありながら、
実は20万円のアナログアンプに匹敵するほどの素晴らしい能力を持っているのです。
透明感溢れる高域を維持しつつ増幅されたアナログデーターは、B&Wのノーチラス・メタルツイーターへと送り込まれます。
B&W DM600 S3のスピーカーは上位機種の恐ろしい程の解像感はありませんが、
理論的に構成された素晴らしいシステムにより、同クラスの中では飛びぬけた正確な再生能力と
容量を超えた豊かな低音再生能力が魅力です。
時として、SU-A70の強力なRコアトランスと組み合わさってしまうと、低域のドライブ能力が強力すぎて、
歯ごたえのありすぎる低域感に、少し高域が華やかに鳴りすぎるきらいがありましたが、
「S-MASTER」の臨場感と、TP-21のわずかながら冷静な透明感が、
ノーチラスの正確な再現性に優美さもプラスされて、非常に満足感の高い高域が出来てしまったのです。
また低域もTP-21まではすっきりとした輪郭で、本来なら少し弱めの量感かとは思われますが、
B&Wのケプラーコーンとエンクロージャー構成が豊かに増幅したばかりではなく、
セッティングの都合上壁際になっていたのが幸いして、実にウェルバランスな低域の仕上がりとなってくれました。
オーディオを構成させる時は少なからずとも、プラシーボ効果があり、
その時は良く感じても、ある時はあまり良くない印象を持ってしまう事が少なくありませんが、
今回は3ヶ月かけての視聴を繰り返していますが、聞く度に音の気持ちよさを感じながら鑑賞できる事から、
どうやらそれぞれの機器の持つ特徴は間違いは無く、それぞれの長所がクロスした最良の結果が引き出された
俗に言う「組み合わせの妙」がBRAVIAの「S-MASTER」の音声出力によって一気に完成されてしまったという事なのです。
よく音を決めるのはスピーカーだの、アンプだのという意見が昔から聞かれますが、
私は今までポータブルオーディオからメディアプレイヤーまで音声出力のある身の回りの物は全て接続を試みてきました。
その結果、得た教訓としてはどの機器もはっきりとした個性のある音色を持ち、
システム構成時には全ての個性が最終的な音質として再生された時にその個性は余すことなく発揮されるという事です。
そして今回の組み合わせにおいて、B&W S3の魅力溢れる音質の為に、
BRAVIAとTP-21の素晴らしい個性が偶然的に重なり合い、
箱庭的音響機器としてはリファレンスとなり得る境地まで達してしまった奇跡とも言える現象なのです。
こうして予想以上に満足度の高い素晴らしい音質を手に入れてしまった私の環境は、
従来のパソコンで手軽に良い音を手に入れる「B級オーディオ」のメインテーマを超えて、
臨場感溢れるデジタル高音質が、いつでもテレビの電源を入れるだけで楽しめる様になってしまいました。
しかし、このままでは単にテレビやDVDが良い音で楽しめるというだけで、
手軽にという面においては選択肢においてはまだまだ不十分です。
ところがこのBRAVIAという怪物は「S-MASTER」という高音質プリアンプという側面だけではなく、
もっと凄まじい単なる液晶テレビを越えたマルチメディア機能を本当に数多く搭載しています。
次回はBRAVIAの持つ異常なまでの拡張性と、先進的なその機能に迫りたいと思います。







