家に帰ると早速、DM600 S3を箱から開封。
中には専用のカタログと、説明書が入っていて、カタログがかなりおしゃれな物だった。
まるで高級家具のような雰囲気で、聞く前から洗脳され気味・・・
スピーカーを出すと開けたての家具のいい匂いがした。
ここまで印象に残る開封は初めてだ。
どうやらイギリスの自社工場で生産しているらしく、出来立ての香りをお届けできるらしい。
なんて甘美なメーカだ。
もう、期待一杯でSANSUI AU-α607に接続。
何を聞いたかはもう忘れてしまったが、音が出た瞬間の感動は筆舌に尽くしがたい。
SANSUIがB&Wというベストパートーナーを得て、今ここにと高らかに歌いだした。
高音はどこまでも澄みやかで、余韻も深く、
ボーカルはくっきりと鮮やかに、
低音は小型なのにここまで出るか、と驚愕するばかりの凄まじさ、
重低音はまるでスーパーウーハーがついているかの様だ。
そして、音の聞こえ方が従来と全く違うのはその輪郭感、または立体感というのか。
スピーカーの離れたところで鳴っている様に作られた音源が、まさしく、スピーカーの無い所から音が鳴り出すのだ。
これは何かの魔法か幻か、と夢でも見たかのような気持ちになった。
高校生のときに本気で旨いと思った洋食屋で、あまりの旨さに
「これは何かのお菓子のようだ」
という意味の解らないコメントをつぶやくほどの、カルチャーショックを受けた事があるが、
今回はそれに匹敵するぶっ飛び具合だった。
それは薄型テレビの液晶の画質でウンウン言いながら買ってみると、3Dで飛び出してきたような物だからだ。
オーディオには定位というものがあり、三角形の頂点にいるとスピーカーが消えるとか、ステレオイメージが明確になると聞いたことがあるが、
これはたまたまセッティングがいいという次元ではない。
それだけB&Wというメーカーが凄かったのだ。
元来、スタンド、SPコード、壁からの距離等は気を使っているほうだ。
いきなりセッティングが出てしまったのだろう。
この33歳でようやく訪れた素晴らしい体験は、今までの苦労が全て報われた瞬間だった。
思えば、17年前のまだ私が16歳だった頃、ミニコンポでオーディオデビューする。
パナソニック SC-CH7 当時69,800円 愛称「half」
アローラを欲しかったが、8万台で予算が足り無かった為、これになった。
決め手は、初めて日本橋デビューした時に店員と話した時の
「このスピーカーは一番奥行きがあるから低音がよく出る」
確かに低音はよく出るスピーカーだった。
スーパーベースボタンを押すと部屋のドアが振動した。
ポートにティッシュを詰めると、勢い良く発射したりしておもしろかった。
しかし、しばらくすると、そんな事をしたいのではない、という事にようやく気が付き、
どうもミニコンポは音が悪いらしい、という事をレコパルという雑誌が言うので、
アルバイト代を貯めて本格コンポを買うことに夢を見た。
アンプはDENONのPMA-390で決まりだ。
低価格なのにトロイダルコアトランスが入っているのが嬉しい。
低音は結構元気に出て、元気良く鳴るとの評論家の先生も言っている。
スピーカーは高音が素直で独特の透明感があると噂のセレッション1だ。
何より外観がかっこいい。バッフルがまるでピアノのようでなんか素敵。
イギリスだから大好きなブリティッシュサウンドもご機嫌だろう。
実際、このスピーカーはチタンツイーターがかなり好みだった。
女性ボーカルをかけると、なんともいえない品と透明感があり、高音が鳴っていないようで
鳴っていると不思議な鳴り方をする。
ツイーターとウーハーのつながりが絶妙だった。
遊佐未森やホリーコールを再生してはウットリとしていた。
しかし、問題があった。
相性がいいものは凄く良いが、その他は全て駄目なのだ。
低音もかなり出ていなかった。
ロックは聴いていて辛い事が多かったし、迫力が欠けていた。
そして20の頃に再び日本橋へ。
じっくりとは聞いてきたが、基本的には店員の言いなりのまま、
スピーカーと何故かサブウーハーを8万円程で買ってきてしまった。
インフィニティ リファレンス10 アメリカ製
サブウーハーはオンキョーだった気がするがあまり覚えてない。
店員がウーハーをしつこく進めてきたからオンキョーのヘルパーだったかもしれない。
インフの代理店でもやっていたのだろうか。
とにかく、サブウーハーとのつながりは全くだった。
当時はサブウーハーが流行っていたが、どうセッティングしても違和感があった。
ウーハーは諦めてインフィニティだけで聞いてみた。
ツイーターはかなり最新の素材で、確かに情報量が多い。
応答性が速く、音離れはかなり爽快だ。
しかし、決定的なカルフォルニアサウンドで潤いとか、色気が無かった。
イーグルス、Mr.BIG、西城秀樹なんかの、枯れた男性ボーカルには向いているのだが、そんな物をあまり聞きたい訳じゃない。
低音を期待していた。
ウーハーサイズはセレッションと比較して10cmから20cmでかなりデカイ。
しかし、低音はむしろセレッションより少なくがっかりした。
箱が密閉だったのだ。
バスレフポートが当たり前だと思っていて、日本製はほとんどがそうだったが、海外は違ったのだ。
こうしてインフィニティは、自宅でプリンスのダイヤモンドなんやらという曲を視聴してすぐにお蔵入りとなった。
高い授業料と反省しつつ、セレッションに戻して聞いていたが、
ある日、DENONの390のRCA端子が腐ってしまった。
ばらした挙句よくわからなくなったので、そのまま放置したまま興味が無くなってしまった。
適当にMDラジカセを使っていた27の頃に、ジョーシンのチラシで9800円の格安コンポを発見。
思わずの衝動買いでオーディオ熱が復活した。
AFINA PC by KENWOOD VH7-PC
これがまたひどい音質だった。
SPキャビネットはそこそこの物だったがパールマイカウーハーはバケツを叩いた様な音で、
アルミツイーターはカンカンと甲高い嫌な音だった。
こりゃ駄目だと思っている内に、ひょんな事から同じくケンウッドの高級スピーカーが手に入った。
KENWOOD S270 \95,000
天然素材を使用したカナディアン・ハドメープル・ソリッドホーン
DDD(Diffused Diffraction Design)バッフル採用
見た目にも、内容的にもかなり期待が持てる雰囲気だったが、これがまたひどかった。
低音はサイズ以上に出て重量感があるのだが、ボーカルが完全に奥に引っ込んで聞こえる物だった。
高音はさらにひどく、一番おいしいところが出てこない。
しかし、超高域だけはなぜか出る。
バランスがあまりにもひどく、これはそうして製品になってこの世に登場してしまったんだろうと、
不思議な気持ちになった。
なんか中華街で高いラーメン食ったら全然まずかった時の感覚だ。
あるいはこれか懐石か何かなのか。
とにかく不味い物は不味いという事でこれも気に入らなかった。
いいスピーカーと出会いが無い生涯を終えるのかと思えた32の頃、
ハードオフで1万5千円くらいの価格でかなり程度の良いダイアトーンと出会った。
DIATONE DS-66EX \99,600
これはきっと凄くいい物だ。
ダイアトーンといえば国産スピーカーの雄。
そして今はもう消えてしまった伝説の軍団。
和製国産スピーカーで数々の名機を作り上げたその実力は数々の賞を受賞した、言わば戦艦大和だ。
技術も凄い。
低域には27cmコーン型ウーファーを搭載しています。
このユニットの振動板の構造にはハニカムコンストラクション・コーンを採用しており、その特性を最大限に活かすために振動板のスキン材にはダイヤトーンが開発したC.G.(カーボングラファイト)コンポジットを採用しています。これにより、高い比弾性率を誇り、低歪、低共振、優れた高速応答性を持つC.G.ハニカムコーン振動板を実現しています。
フレーム構造にはR.S.フレームを採用しており、振動系で発生した振動モードを交互に形状の異なる8本のアルミダイカストフレームが分散することで、振動板の特性を最大限発揮しています。
中域には10cmコーン型スコーカーを搭載しています。
振動板には高い剛性と比弾性率を持つカーボンクロスを採用しており、さらにセンターキャップにはトゥイーターと同じS.R.チタンを採用することで広帯域化を実現しています。
また、スコーカーのフレーム構造には、ウーファーと同じR.S.フレームが採用されています。
高域には2.5cmドーム型トゥイーターを搭載しています。
振動板の構造にはダイアフラムとボイスコイルボビンを一体化させたダイヤトーン独自のD.U.D.構造を採用しており、ハイスピード再生、広帯域化、パワーリニアリティの改善を実現しています。また振動板素材には、チタン振動板に特殊表面硬化処理を施すことで比弾性率を約40%以上向上したS.R.チタンを採用しています。S.R.チタンでは被膜形成によって振動板組織を物性値の異なる3層構造とし、金属振動板にありがちな鳴りを抑えています。
さらにトゥイーターユニットでは、磁器回路とフレームを一体化させ、ユニットの高剛性化を図ったD.M.(ダイレクト・マウント)方式を採用しており、剛性を高めて振動を抑えています。
ネットワーク回路の徹底した見直しが図られています。
DS-66EXでは、配線材同士をスリーブでかしめて圧着し、半田を排除しています。また、2分割構造とすることで大きな磁束を発生させるウーファー用素子は独立させています。さらに、線材には無酸素銅線のみを使用し、コンデンサーや抵抗も測定と視聴を繰り返して選択されたものを使用しています。
また、スイッチ接点での音質劣化を防ぐため、アッテネーターも排除されています。
エンクロージャーのフロントバッフルには4サイドラウンドバッフルを採用しており、バッフル板の4辺をラウンド形状とすることで回折効果による音質劣化を抑えています。
思わず眠くなるくらい凄いぞ!
これだけ技術一杯で視聴は出来ないけど、さすがに40cmもあれば低音がうねる様に出るに違いない。
中音や高音も3WAYなんだからきっと、ボーカルも超高音も煌びやかに奏でるだろう。
嬉々としてその装置を当時のSANSUI α607につないでみた。
その結果はなんともひどかった。
中高音しかまるで出ていない。
それらの音も全然工夫が感じられず、ただの板にスピーカーがくっついているだけの様なひどい音だ。
文化祭の時に、焼きそばショップとかでBGMでかけるラジカセの様な音がした。
とにかく昭和レトロサウンド。
ホッピーにカレーの香りが漂ってくるかのようだ。
低音はまたもや密閉だった。
裏技でスピーカーターミナルを外すとバスレフ状態にはなるがポートコントロールしている訳ではない。
音量をかなり上げるとなかなか良くはなるのだが、かなり常識外れの音を出さなければならない。
かといってその段階に持っていかないとカクンと音がひしゃげてひどくなってしまう。
これはきっと文明開化サウンドだな、と結論が出てしまった。
最後の希望の戦艦大和が沈む。
もはや、後が無かった。。。。
こうして、私は秋葉原に旅立ち、大好きになれるB&Wサウンドを手に入れた。
次回はその優れた秘密に迫りたい。
今回、こうして改めて今までを眺めてみると自分の失敗の多さに辟易する。
しかし、オーディオ好きな人は結構こういう体験が多いと思う。
なんせ、
「視聴していまいちと思った時の方が家でセッティングしたら良かった」
という世界。
はまって、一度こだわり出すと抜け出せないのがオーディオの蟻地獄。
金がいくらあっても足りません。
私はあB級でいいから、少しでもいい音を目指して満足を追求したい、
と思う。





