例えBACH~例えばマタイ受難曲
 バッハの最高傑作と呼ぶに相応しいこの曲を、私はカール・リヒターの名演
で知りサイモン・ラトルとベルリンフィルの快演でようやく理解する事が出来
ました。
 カール・リヒターの演奏については名にも言うことは有りませんが、敢えて
言わして貰えれば、中でもアルヒーブ盤が最高です!
 
 さて、ラトルのライブ演奏。
 特質されるのはエバンゲリストが語りとイエスの苦悩する肉体を一人で演じ
ている事です。これで観衆はバッハの意図したテーマを確りと感じる事が出来
ます。
 そして、二人のマリア・・・聖母マリア(ソプラノ??)、娼婦マリア(ア
ルト、コジェナ)の歌と演技でドラマチックに展開して行きます。
 ソプラノのマリアは明らかに嬰児イエスを懐妊しています。
 この舞台でバスの歌う人間イエスと神の子イエスが同時に存在しているので
す。
 マタイでは合唱を、イエスを賛美する者達と非難する者達と、二群に分けて
います。娼婦マリアは敢然と非難する合唱隊に挑んで行きます。コジェナの過
剰過ぎる演技か美事にはまっています!
 そして古楽器奏者を交えたオーケストラ、声も出ない程の美しさ、私の拙い
文章では表現不可能です。
 各セクションのコンサートマスター、フルートのエマニュエル・パユ、オー
ボエのアルブレヒト・マイヤー(二人はソリストとしても一流)、そして第一
バイオリンの樫本・大進。美しさとほとばしる激情を演じ分けるバイオリニス
トがかっていたでしょうか!? 
 二人のマリアとソリスト達の名演奏だけでもこのライブを観る価値がありま
す。
 ラストはキリストの処刑と復活ですが、このライフでは神の子イエスと人間
イエスの永眠で終わります。そうです、マタイ受難曲はイエスの受難と奇跡の
復活、更に人間イエスの永眠への祈りなのです。
 皆さんも是非、この事を頭に入れてマタイを聴いて下さい。
 私も例年のように、今年のクリスマスはタイ受難曲を聴いて過ごす積もりで
すが、皆さんも今ユーチューブで幾つかのタイ受難曲を配信していますから、
是非ゼヒ是非観に行って下さい。
 ユーチューブ有り難う!

    阿方紀世