とあるカフェに行った。

オーナーは90歳手前の女性の方。腰は直角に近いほど曲がってた。


お客さんは私と友人の2人だけだったので、その女性の方とたくさんお話をした。


その女性は70には70の80には80の景色があるとおっしゃった。

その歳になれば見えてくる景色があるのだそうだ。

90歳になったらどんな見え方がするんだろうって楽しみだそうだ。


私は40代です、とお伝えすると「まだまだ赤ちゃん」と笑っていた。

「人生これからだよ、本当にこれから」

そうおっしゃる。


「私は30代、40代の時は先が見えなくて暗闇を歩いてるみたいだった。でも若かったから、手探りで暗闇の道を歩けたんだ。あなたも今は暗闇の道を歩いてるみたいだろうけど、だんだん道が明るくはっきり見えてくるよ」


そう教えてくれた。


もう40代の中年のおばさんだと思っていた私だけど、赤ちゃんだと言われて新鮮だった。

そして私は赤ちゃんなのに、暗闇を手探りで歩いてるのか。どおりで大変なはずだ。

愛おしい私の人生。


カフェを出て駐車場までの道を友人と2人で歩いた。

月がとても綺麗だった。

「13夜だよ」と友人が教えてくれた。

13夜なのか。

15夜はよく聞くけど、13夜って月もあるんだ。

そんな事を思いながら、ご高齢の素敵な女性の言葉を私は一生忘れないだろうと思った。


自宅に帰ると、愛するペットがいつものように私の元へ駆け寄ってくれた。

末っ子ちゃんも「ママ!」と嬉しそうに叫んでいる。

夫は汗をかきながらお好み焼きを焼いていた。

私の40代の時間。