パーキンソン病の原因については単一の素因ではなく、遺伝素因と環境因子に加齢が重なった複合因子によるものと推定されている。すなわち黒質ドーパミンニューロンは加齢とともにその数は減少するが、パーキンソン病患者ではこの過程が病的に促進されており、この原因としては遺伝素因と環境因子の相互作用が推定されている。パーキンソン病はハンチントン舞踏病のような単一の遺伝子による遺伝は否定されているが、約1割に家族内発症があることや、少数例ながら常染色体優性遺伝を示す家系や常染色体劣性遺伝を示す家系が報告されていることなどから、素因となる遺伝子に一酸化炭素、マンガン、1-methyl-4-phenyl-1、2、3、6-tetrahydropyridine(MPTP)などのような神経毒が作用したり、tetrahydroisoquinolineのような内因性神経毒が蓄積して、これがミトコンドリアのエネルギー生産を破綻させ細胞死を招き、この過程のなかでスパーオキシドニア(O2-)やヒドロキシルラジカル(・OH)などによる酸化的ストレスが相乗的に作用するなどの仮説が提唱され、実験室レベルでの検討がなされている。いずれにしても分子レベルでの黒質細胞死の原因を明らかにすることは、治療や発症予防の観点からも大切なことである。病理学的には、中脳の黒質・脳幹のメラニン含有細胞の変性・脱落、Lewy小体の多発、生化学的には線条体におけるドーパミン含有量の低下を生じることが原因である。