テリーギリアム監督の映画が大好きです。


現実と夢、妄想の境目が曖昧で、


昼寝をしたときに見る、妙にリアルな悪夢みたいな雰囲気がたまりません。


そんな監督の作品のひとつ、「ローズ・イン・タイドランド」をみてみました。



あらすじは、


主人公の少女ローズは、ドラッグ中毒の両親と暮らしていましたが、


ある日母親が薬の中毒症状で死んでしまいます。


それをきっかけに父親の故郷へと逃げるように旅立った父親とローズですが


そこで父親も中毒症状を起こします。


残されたのは唯一の友達の首だけの人形達とローズ。


そこで風変わりな隣人と関わっていきますが・・・



なにか言いたいことがたくさんあるようで、ないようで


気持ちが治まらない感じです。


最初に感じたのは不満でした。


テリーギリアムの映画は現実とファンタジーが半々というか3:7というか


そういうのを期待していたのに、


この映画ではローズが妄想するときくらいしかファンタジーがありません。


最初から不思議の国のアリスの話がチラついているので


いつローズも不思議の国へ行くのだろうかと期待していたんですが、その気配がありません。


でもみていくうちに、このタイドランドは十分ファンタジーだと思えてきました。


ちなみにタイドランドは「干潟」という意味だそうです。映画的には「境界線」とのこと。





ここからネタバレがはいります。














まず登場する人達が個性的です。


蜂避けだという喪服を着た、片目を失明しているカンシャクもちの女性デル。


その弟の、頭に手術跡があり、そのせいか少し障害のある男性ディケンズ。


この二人が隣人なんですが、もうかなり風変わりです。


想像力豊かなローズから見た二人は、幽霊やらサメハンターやらと


様々に印象が変るのが面白いです。


だんだんと面白いとか言ってる場合じゃなくなりますが・・



途中からローズの腹話術ではなく本当に喋ってるようにしかみえない


ローズの唯一の友達、バービー人形の頭だけ達。


ここはすごくファンタジーでした。


後半に行くほど人形達は生き生きとしてきます。


ディケンズに人形の頭が耳打ちしたとき、ローズは話してるように見えませんでしたが


彼はちゃんと受け答えをしていました。



ディケンズといえば、二人の間の恋愛めいたもの。


あれにはヒヤヒヤしました。


とってもピュアな感じはするんです。


けど、ディケンズは髭もはえてるお年頃。


変な話になるんじゃないかと手に汗無駄ににぎってしまいました。



ローズの住むことになった家をデル兄弟とローズできれいにするシーンがあるんですが


音楽も明るく、どんどんきれいになっていく過程も楽しいんですが


その前後にすごいことがおきているので(お父さん剥製化、デルからの脅し


妙に浮いていましたが、結構好きです。



そして主人公のローズの可愛さはすごいです。


服も可愛いし、行動もかわいい。


お呼ばれしたときに精一杯着飾ってお化粧をするんですが、


それがお母さんと同じメイクだった気がします。なんだか泣けます。



このタイドランドは、現実で起こったファンタジーなんだと思います。


直視したくないことや、傷ついて当然のことが起こるのに


ローズが当たり前のようにすべてを受け入れてるので


見てるこっちからしたらあちらは不思議の国なんです。


不思議の国のアリスとの差があるとしたら


二人の境遇は違えど、


アリスはワンダーランドへ行って


ローズはタイドランドへ行った。


それくらいなんじゃないかなぁと思います。