ついに読み終えました。
ジェフエメリックの「ビートルズサウンド最後の真実」を。
と、言うか読み終えてはいたのだが、
この原稿を書く事に、ネタがネタなだけにけっこう時間を費やしてしまった。


さてさて、この一冊の書物でどれだけ私がわくわくしたり、
厭な気分になったりしたことか...計り知れない物があった。


13才の時にラジオから流れてきたとんでもない
イマジネーションを駆り立てられる、知恵熱ものの怪物曲たち。
それがビートルズであり、他のポップスやロックとは群を抜いて
私の中で確立したものとなる。
いったいなんなんだ...ビートルズという集合体は!?
当時の私の脳みそのほとんどを支配してしまったのである。


そして謎めいたエピソードがたくさんラジオのDJの語りから知らされる
わけであるが、言ってることが無責任にバラバラであったりして
さっぱり全貌がつかめない。
しかし、絶対にただものではない音楽だけではない「何か」が彼らにはある。
と、子供心に確信をした。

それから長い年月が流れ、違う意味でビートルズは
私の中で圧倒的に凄い音楽として確立され、
その「何か」の方はもうどうでもよくなっていた。

この本のページを開くとそこにはその「何か」が発見できる意味での
知りたかった事、知りたくなかった事、のエピソードで渦まいていたのである。


このエメリックという人、人物観察と描写がシャレにならない。
本気で純粋ストレートである。使う言語フレーズが実によい。
エンジニアとしての立場上、
ビートルズの4人とジョージマーチンとの接し方が超ダイレクト。
そしてその日々を回想録として本にしてしまうのだから凄い。
超ファインプレーである!!
よくぞ死ぬ前にまとめる気になったものだ。


生々しくて匂いや温度まで伝わってくる。


音響エンジニアとしての才能は、

ただ単に機械や理論に詳しいだけじゃダメだ。
むしろそんなことより、人物や楽曲やムードを知る、謙虚に認める、
そして好奇心にたけ、その世界の中に

すっぽり入っていけるかの才能、だと思った。


もちろんエメリックはちゃんとした技術者で
普通の仕事も相当出来るんだろうけど、
そんなことじゃない彼の才能がはじけまくっている一冊であった。

ビートルズというバンドは4人?...2人?...の天才じゃなく
こういうタイプの天才もちゃんといたんだなー...と、
つくずく思ったのである。


名作アイアムザウォルラスや
ビーイングフォーザベネフィットオブミスターカイトが
オーバーダブされる前の肉付きの無いテイクと、
された後の完成型テイクの違いを聴けば、
おのずと彼のぶっとびの才能がわかる。


まるで子供のようにつぎつぎと難題アイディアを言ってくる
ジョンとポールに真っ向から立ち向かい、
ビートルズの辞書には「ノー」の文字は無い精神で
深夜にまで及ぶひつこいセッションに付き合い、テープを回し続けた彼は
若いバイタリティーに満ちあふれていた。

そしてその工程を自らのキャリアと才能にプラスにしていった。


...彼やジョージマーチンがもしいなかったら
ビートルズは生きているうちに世の中に認められず、
ゴッホのように悲しく死んでいったに違いない。


さて、ビートルズに話を戻すが、この本を読んで、
改めて音をじっくり聴きたくなり、空いている時間は、
とにかくビートルズを聴きまくった。
そして、私の表現(音楽や映像やトーク立ち振る舞いなど全て)活動の
全ての正解は誇張でもなんでもなくビートルズ
(1966年以降、いや正確にいうとペパー、マジカルミステリーツアーと、
ホワイトアルバムの3枚、)にあったことに気づく。

レボリューションNO9にちりばめられた逆回転の音など、
たった2秒ほどしか出て来ないフレーズでさえ
ちゃんと私の13歳だった脳に刻まれていて、
その音(フレーズ)を無意識に探している自分がいた!


以前どこかに書いたと思うが
私も36年前を回想しよう。


ビートルズを初めて聴いた直後、弟(ヒノヒデキ)と二人で
親から譲り受けたラジカセ2台を使って多重録音というものを
本能の赴くままにやった。14歳と11歳の時であった。
ちゃんとした「楽器」とよべるものはぼろぼろの
エレキギターと、フォークギターのみ。

ビートルズのまねをしてレコーディングセッションがはじまった。

まずリズムトラックからのレコーディングだ。
エレキギターの音をこもらせ5~6弦を中心に弾く。
スピーカーアンプはてんとう虫系のレコードプレーヤーのスピーカーだ。
しかしなんとロウの足りないことか...
ピックで弾くより親指で弾くほうがロウが出ることを知る。


スネアやタムの代わりに筒状のゴミ箱の底と、ダンボール箱、
空洞があるとよく音が響くことを知る。
ミュート系の座布団、アタック系の図鑑の表紙などを箸でたたく。
シンバルの代わりにのこぎりをたたく。
フライパンやヤカンはうるさくてだめだ。
あとは鈴を振る。

それを聞きながらギターでコードとアルペを弾き、録る。

チャンネル数の関係で(もちろんチャンネルはひとつだ)
エレキとアコギを同時に録らねばならない為
録音レベルは立ち位置の距離で決める。


いよいよ次の歌録りにはリバーブを効かせたい為、
レコーディングスタジオをマンションの階段や風呂場に
ラジカセに電池を仕込んでを移動して録る。

リバーブのレベル調整は風呂場のドアの開け閉めや、
内蔵マイクの上に紙をはったりしてで決める。
時にはストーブの中(もちろん火は消して)、あの顔が変に映る銀板みたいな部分
に顔をつっこんで録る。

トレモロ効果を出したいときは扇風機の枠をとりはずし
弱にして羽根の前に顔を近づけて録る。
エキサイトしすぎて鼻で扇風機を止めることもある。

ここまではほぼビートルズ、エメリックと発想が一緒じゃないか!?
向かっている方向が一緒ではないか!!
この本を読んであっていることが確認できた。

あとはリードギターとコーラス録りなのだが、多重録音も4重めにもなると
その時点でリズムトラック1重めがノイジーにシャーとかいって消えていってしまう。

エメリックならこういう時どうしただろう(笑)


しかたなしにベースだけ最後に録り直す。
お??...ペパーの時のポールと一緒だぜ!!
あとから弾きなおしたベースはロウがきれいに入り感動。


セッションの始まる前、どっちがどのパートをやるかで
わくわくどきどきになる。結局、ちゃんとコピーが出来ている方に
セッションの権限があるわけで、好きな曲は負けてられない、必死でコピーをした。

こんなこともあった。
ジョンとポールの歌を歌いたいのだが、ヒノヒデキ小学6年生、ゴロー中学3年生、
声変わり前のヒノヒデキにヴォーカルパートはいってしまう。
悔しかった...

何十曲録っただろうか。
いまだにその最高で最低のセッションのテープは残っている。


さてぼちぼちビートルズに話を戻すとしよう。

後編では、熱くはまりにはまった数々のエピソードと、
今後の自分たちの活動とシュミレーションして
まとめていきたいと思います。