少し前のことで、映画『シン・ゴジラ』を観に行った際、上映開始前に福山雅治主演映画『SCOOP!』(10月公開予定)の予告編を見せられた。普段より映画情報なんて追わない自分なので、初めてこのときに『SCOOP!』という作品があることを知った。それで、なんか既視観あるなと思い、何日か後に再び『シン・ゴジラ』を観に行った際、やはりまた『SCOOP!』の予告編がやっていて、そのときに『盗写 1/250秒』にずいぶん似てるなと浮かんだ。調べてみたら、やっぱりそれが原作となっているとのこと。

 

映画『SCOOP!』公式サイト

http://scoop-movie.jp/

 

ちゃんろぐ SCOOP!原作 盗写1/250秒

http://noritenbz.exblog.jp/25155523/

 

『盗写 1/250秒』は、いまから31年前の1985年2月6日(水)に日本テレビの映画番組「水曜ロードショー」枠にて放送されたものである(また、記録によれば、同年6月23日に劇場公開されたらしいのだが、全国公開みたいな大々的なものではなかったらしいので、ちょっと詳細がわからない。これは後日調べなおしたい)。

 

おそらく自分はこの放送を観ていたと思うし、いまから十年以上前だが、レンタルビデオ店がいまのようなDVDではなくてまだビデオテープの時代にソフト化されたものを一度借りてきて観た覚えがある。が、どちらにしろ、印象は薄い。だから、『SCOOP!』にしても、『盗写 1/250秒』にしても語る言葉を持っていないのだけど、『盗写 1/250秒』が劇場公開よりも先にテレビで放送された経緯については多少知っていることがあるので、それを語っていきたい。

 

じつはいまから5年前、当ブログの初期にもそれを語ったことがある。「水曜ロードショー」の放送曜日が1985年秋の改編期に金曜日に移っての「金曜ロードショー」枠で放送された『大江戸神仙伝』(1985年11月8日放送)という作品について語った際に。まずは、その項から抜粋。

 

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この『大江戸神仙伝』、制作の経緯が面白い。それは80年代前半の、テレビにおける邦画放送の事情が絡む。レンタルビデオはおろか、まだビデオデッキがそれほど普及していなかったこの時代、テレビ各局において、映画の放送は巨人戦と列ぶ魅力あるコンテンツだった。しかし、魅力あるコンテンツということは、各局間で争奪戦がひろげられ、それだけ買い付け値段も高騰していったのである。邦画では、とくに1983年のカンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞した『楢山節考』と、それと争った『戦場のメリークリスマス』の両作品は、話題性と箔が付いていた面でも、相当なものだったと言われる。

 

また一方で、現在のようなテレビ局による劇場公開作品への制作の介入も始まっていて、1983年夏、フジテレビは『南極物語』を興行的に成功させただけではなく、テレビ放送においても翌年秋の改編期の金曜日と土曜日二夜連続でプライム時間帯に前後編に分けて放送し、とくに後編は視聴率30%以上と裏番組の連続ドラマの新番組(日テレ『気分は名探偵』、TBS『スクール☆ウォーズ』)を蹴散らした。

 

そういうわけで、80年代後半に入ると、各局は“二度おいしい”映画事業に本格的に乗り出していくのだが、その端境期に作られたのが『大江戸神仙伝』をはじめとした日本テレビの「水曜ロードショー」および後継の「金曜ロードショー」枠で放送するためのテレフィーチャー作品だったのである。

 

ご存じのように、テレフィーチャーとは、テレビ用映画のことで、広義において、長時間ドラマのことを指してもいる。日本では1977年のテレビ朝日「土曜ワイド劇場」から本格的に作られ、他の局も後に続いた。それ以前からではあるが、ドラマ、とくにフィルム作品などは、斜陽の映画産業からスタッフや俳優、プロダクションそのものまでも流入してきて、そのクオリティと隆盛とを誇っていて、映画と同じ1時間半から2時間弱の単発もの作品はさらに拍車を掛けるものであった。が、いかんせん一回限りの放送だから、制作予算も題材もテレビの枠に収まってしまっていて、どうしても“本編”と呼ばれる映画との差異が目に付くようになってきてしまったのも否めない。だから、2時間ドラマの枠にいつもより豪華な感じで邦画作品は持ってこれても、逆に映画放送の枠にいくらフィルム作品だからといってテレフィーチャー作品を持ってこれなかったのはこのためである。

 

つまるところ、映画放送枠における邦画作品のジレンマを抱えていたのだ。

 

その打破を狙って、劇場用作品なみの予算、制作期間、スタッフや俳優の豪華な布陣を敷いたのが、先述の日本テレビの「水曜ロードショー」および後継の「金曜ロードショー」枠でのテレフィーチャー作品なのである。

 

2011年4月11日付けの当ブログ 「大江戸神仙伝 その1」より

http://ameblo.jp/goro-chayamachi/entry-10858308692.html

 

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上述の記事を書くにあたって参考にしたものの一つで、『TVガイド』1984年8月17日号掲載の、この日本テレビ「水曜ロードショー」テレフィーチャー路線開始の先取り情報によれば、すでに制作に入っていた放送第1弾として『太陽にほえろ!』のスタッフが手がけた『ロス市警アジア特捜隊』(1984年12月12日放送)、アニメによる横山光輝原作『三国志』(1985年3月20日放送)、この『大江戸神仙伝』(1985年11月8日放送)の他に、実際はテレフィーチャーとして放送されたものではなく劇場用映画として公開された『ウホッホ探検隊』(1986年10月18日公開)もラインナップに記されていた。

 

しかし、放送第1弾となった『ロス市警アジア特捜隊』に続く第2弾の『盗写 1/250秒』(1985年2月6日放送)のことは触れられていなくて、もしかしたら別ルートからの合流だったのかもしれない。

 

○「水曜ロードショー」および「金曜ロードショー」のテレフィーチャー作品一覧

『ロス市警アジア特捜隊』(1984年12月12日放送)

『盗写 1/250秒』(1985年2月6日放送)

『卒業 -GRADUATION-』(1985年3月6日放送)

『三国志』(1985年3月20日放送)

『CF愚連隊』(1985年5月8日放送)

『法医学教室の午後』(1985年6月12日放送)

『俺たちの旅 十年目の再会』(1985年9月4日放送)

 *ここまで「水曜ロードショー」枠での放送で以下「金曜ロードショー」枠に移行

『大江戸神仙伝』(1985年11月8日放送)

『ヨコハマ物語』(1985年12月20日放送)

『卒業 -GRADUATION-』アンコール再放送(1986年3月21日放送)

『三国志』アンコール再放送(1986年3月28日放送)

『三国志Ⅱ 天翔ける英雄たち』(1986年8月22日放送)

『法医学教室の長い一日』(1986年11月7日放送)

 

1~2ヶ月に一本の割合で挟まれてたテレフィーチャー路線の作品は当初の目的が終わった1986年に入ると鈍化し、同年11月の『法医学教室の長い一日』で終了する。それ以後も「金曜ロードショー」枠で、既存の映画作品ではない、オリジナル制作のテレフィーチャー作品が放送されるも、志の部分が違うと思うので省いた。

 

放送されたテレフィーチャー作品について、いくつかかいつまんで紹介すると『CF愚連隊』は後年に同じ原作を使って世良公則主演で映画『CFガール』が作られて劇場公開された。『卒業 -GRADUATION-』は当時人気アイドルであった菊池桃子主演作品で、初回放送の反響が高かったことから翌年の同時期に再放送がなされた。アニメ『三国志』もそれにあたるものの、その他のものについては、ほとんどが本放送のわずか一回のみで、後年に『法医学教室の長い午後』くらいしか再放送(それも深夜枠で)がなされていない。

 

ほとんど再放送がされたことがなかったこれらテレフィーチャー路線の作品は1990年代に入ってから、アニメ『三国志』&『三国志Ⅱ』の他、「日本映画秀作シリーズ」と銘打って『盗写1/250秒』、『CF愚連隊』、『法医学教室の午後』、『俺たちの旅 十年目の再会』、『大江戸神仙伝』、『法医学教室の長い一日』がVHSでソフト化された。『俺たちの旅 十年目の再会』はDVD化されたものの、それ以外は適っておらず、これらのソフトは現在では入手困難である。また、2003年に『卒業 -GRADUATION-』が菊池桃子のDVD&CDボックス『菊池桃子 プレミアム・ボックス LEGEND』に収録されて初ソフト化。いずれも日本テレビの関係会社であるVAPからの発売である。

 

『俺たちの旅 十年目の再会』は元ネタの『俺たちの旅』(日本テレビ-ユニオン映画、1975年10月5日~1976年10月10日まで放送)とともにスカパー!では頻繁に放送されていて、今度またチャンネルNECOで放送されるとか。『卒業 -GRADUATION-』もソフト化されてからしばらくしてチャンネルNECOで一時期放送されていた記憶がある。現代と江戸時代を行き来する物語の『大江戸神仙伝』は時代劇専門チャンネルで時折放送されている。

 

さて、『盗写 1/250秒』である。これはスカパー!でも過去放送がされたことがない。今回いい機会なので、10月の『SCOOP!』劇場公開に合わせて地上波でなくともどこかのCSチャンネルでプロモーションも兼ねた放送がされるのかと思いきや…。

 

『SCOOP!』の製作元は主演・福山雅治の所属事務所であるアミューズとテレビ朝日で、共同製作のひとつに東宝が入っている。ならば、東宝が運営に参画している日本映画専門チャンネルでやればいいじゃないかと思うも、そこにフジテレビも参画しているので、テレビ朝日がこれから儲けようという映画をやるわけにはいかないのだろう。あとは、テレビ朝日運営のテレ朝チャンネルに期待するしかないのだが、映画の宣伝CMもやっていないし、どうもその気配がないように感じる。はてさて。