梅津栄に続いて、三角八郎もお亡くなりになった(晩年近くからは三角八朗名義での活動だったが、馴染みのある八郎のほうで語らせていただきたい)。
このお二方は自分が特に偏愛するゲスト俳優だった。このお二方が出ているのならば、メインでもチョイ役でも観たい!、観て良かった!と思わせるものばかり。ともに80歳代だったから寿命といえばそれまでだけど、ファンとしては寂しいかぎり。心からお悔やみ申し上げたい。
梅津栄のベストを挙げるとすれば、メインゲストで出演した『赤かぶ検事奮戦記』第2話「被告人、名無しの権兵衛」(1980年10月10日放送)。梅津栄は、フランキー堺演じる赤かぶ検事が受け持つ飛騨高山市内にある高山駅で置引きをはたらいた男の役で、取調べに自分の素性を頑として隠し通したことから、氏名不詳で起訴されて裁判に持ち込まれることに。微罪だけにすぐに裁判は終わって釈放されたものの、赤かぶ検事はこの“名無しの権兵衛”が何か大きな犯罪に関わっているから素性を隠して飛騨高山市内に現れたものだと睨み…という内容。
ケチな置引きで捕まった前半は警察の取調べに対して何聞かれても煙にまいた氏特有のすっ呆けた演技、そして釈放された後半になると、じつは妻を殺した保険金詐欺の男だったのだが、その保険金を不倫相手に持ち逃げされていて、居場所を突き止めた飛騨高山に回収&復讐しにきた凶悪犯という、これまた氏特有の狂気な演技で楽しませてくれる。
なお、赤かぶ検事の天敵で、梅津栄演じる“名無しの権兵衛”の弁護を担当する弁護士役に沖雅也。この二人は前年の『俺たちは天使だ!』第3話「運が悪けりゃ殺人犯」(1979年4月29日放送)でも共演していて、梅津栄は沖雅也演じるキャプテンこと麻生雅人経営の探偵事務所に、自分が不倫旅行している際のアリバイ作りを依頼してくる恐妻家役で。梅津栄と沖雅也の役どころにおける構図は同じなんで、二作品を見比べてみるのも一興。
三角八郎のベストはメインゲストで出演した『太陽にほえろ!』第565話「正義に拳銃を向けた男」(1983年8月5日放送)。やはりこちらも二面性がある役で、前半は人生を負け組で送ってきた性格が臆病なタクシー運転手なのだが、後半は暴走族に娘を殺された男から死に際に復讐の代行を懇願されて、それに感じ入った正義の請負人と化して、暴走族、そして暴走族を保護しようとする警察にも銃を放つ狂気の男というもの。善人から凶悪犯までオールラウンドな三角八郎にぴったりの役どころでもあり、それにいかにも『太陽にほえろ!』らしい話で、新人・又野誠治演じるブルース刑事の身体を張ったスタントなしのアクション、緻密なガンアクション、爆破までサスペンス要素が詰まった傑作回でもある。つい先月、この回はファミリー劇場で放送された。録画していてまだ未見だという人は是非とも観てもらいたい。
【だん吉・なお美のおまけコーナー】
これからのNHK大河ドラマ『真田丸』にロッキー刑事の木之元亮が出演。役どころは、関が原の合戦の後、真田父子が徳川方の追放命令によって蟄居した九度山村の村長役で。かつて木之元はNHK新大型時代劇『真田太平記』(1985年4月~1986年3月まで放送)で草刈正雄演じる真田信繁(幸村)に心から仕える従者、向井佐平次役でレギュラー出演していて、再びの草刈との共演など、そのオマージュ的なキャスティング要素が濃い。しかも、トレードマークであった髭を蓄えての出演で、『太陽にほえろ!』ファンにも歓喜もの。必見だ!
NHK大河ドラマ『真田丸』 人物紹介
http://www.nhk.or.jp/sanadamaru/cast/chobe.html#mainContents
時代劇専門チャンネル『真田太平記』紹介
http://www.jidaigeki.com/program/detail/jd00001182.html