既報の通り、日本映画専門チャンネルでは現在放送中のテレビドラマ版『不毛地帯』(毎日放送、1979年4月~1979年10月)のほか、来月からはテレビドラマ版『華麗なる一族』(毎日放送-東宝、1974年10月~1975年3月)も放送。さらに映画版の『白い巨塔』と『不毛地帯』の放送と合わせて、“映像で甦る山崎豊子の世界”と題した特集を組んでいる。


日本映画専門チャンネル 「映像で甦る山崎豊子の世界」

http://www.nihon-eiga.com/program/index_pm.html#7


当ブログ 1974年10月、連続テレビドラマ「華麗なる一族」と、その時代

http://ameblo.jp/goro-chayamachi/entry-11424727352.html


没後二年、今夏は作家・山崎豊子に関する書籍が二冊発行された。一冊は秘書をしていた方が綴った『山崎豊子先生の素顔』。もう一冊は多くの小説の刊行元である新潮社が発行したガイド本『山崎豊子 スペシャル・ガイドブック』。


山崎豊子先生の素顔/文藝春秋

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山崎豊子 スペシャル・ガイドブック: 不屈の取材、迫真の人間ドラマ、情熱の作家人生!/新潮社
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今回はこちらの方を紹介したい。多くの作品にベースとなった、出自である大阪商人の家に生まれ、毎日新聞の記者から作家デビューに至るまでの足跡から、各作品の解説と秘話が簡潔に纏められていて、山崎豊子ファンにとっては、まさに“こんなの欲しかったんだよ~”的なものだ。


小説ばかりではなく、映画やテレビドラマで映像化されたものにも多く触れられていて、それに携わった方たちのインタビュー記事を多数掲載。皆一様に言及していたのは〝自分が作った小説と他者が手掛ける映像とは別物、観る人も違う感覚で捉える〟と最初から判っている寛容な原作者であった。もちろん、スタッフや出演者などは、あの山崎豊子の原作に挑むのだから、原作の世界観を大切にし、相当な意気込みで手掛けていたとのこと。小説とその映像化作品の幸せな関係が伺える。


一方で映像化作品の記述は杜撰であったのが残念だ。まず、映像化されたものを網羅出来ていないから資料的な価値が低い。それに田宮二郎版のテレビドラマ版『白い巨塔』(フジテレビ、1978年6月~1979年1月)などは、本放送時あたかも大ヒットしたかのように記述されているのだけど、それは間違い。後追いしたくなかったのだろうが、ウィキペディアに書かれてある方が正確な評価だ。放送日時の土曜9時は裏番組に全盛期のTBS『Gメン’75』(TBS-東映、1975年5月~1982年4月)があり、その後塵を拝して視聴率が伸び悩んでいたところ、主演・田宮二郎のセンセーショナルな猟銃自殺により最終回間近の視聴率が跳ね上がり、以後伝説的なドラマとして後世に残ることとなった。もしも、田宮があの時自殺しなかったら、再放送もそれほど行われず、『華麗なる一族』や『不毛地帯』のテレビドラマ版と同様に人々の記憶から忘れられていったものとなっていたかと思う。


当ブログ記事 1984年、NHK大河ドラマ『山河燃ゆ』

http://ameblo.jp/goro-chayamachi/entry-11774094734.html


なお、来月9月からは関東と関西の高島屋四店(日本橋、横浜、京都、大阪)で「追悼 山崎豊子展」が巡回して開催される。 こちらも楽しみだ。


高島屋公式 追悼 山崎豊子展 ~不屈の取材、情熱の作家人生~

https://www.takashimaya.co.jp/store/special/event/yamasaki.html