今週日曜からファミリー劇場で放送されているアクション・ドラマ『コードナンバー108 7人のリブ』、金曜深夜(といってもほとんど土曜の朝方に近いが)にリピートがあるので、見逃してしまった方はそちらでチェックを。


ファミリー劇場 『コードナンバー108 7人のリブ HDリマスター版』紹介

http://www.fami-geki.com/detail/index.php?fami_id=02400


『コードナンバー108 7人のリブ』はカルト中のカルト作品で、懐かしドラマの教科書たる『男泣きTVランド』(1995年刊)にもタイトルさえ取り上げた記事はなかったくらいである。昔のテレビ情報誌が愛読書(笑)の自分もその存在は見過ごしていて、数年前に出演者の一人だった牧れいが自身のブログで放送開始時のパンフレットを公開したことから、「こんな作品あったんだ」と驚いたものであった。


制作元の宣弘社(名義はSMC)にとっては、それまで数多く手掛けていた夜7時台の児童向け30分枠作品とは違って、夜10時台というプライムタイム帯で大人の視聴者に向けた初めての60分枠作品であった。女性スパイ・アクションというジャンル、そして国際犯罪を取り扱う設定やハードボイルドな作風は、Wikipediaの項目にも書かれてあるように、少し前までやっていた『プレイガール』(1969年4月~1976年3月)と『キイハンター』(1968年4月~1973年4月)、同時期の『Gメン'75』(1975年4月~1982年4月)あたりからの影響が強く見られる。


1976年10月 アクション・ドラマ&刑事ドラマ一覧


(月曜) TBS『刑事くん』、●フジ『刑事物語・星空を撃て!』、東京12『特別狙撃隊☆SWAT』(アメドラ)
(火曜) NET『新・二人の事件簿・暁に駆ける』、日テレ『いろはの〝い〟』、●フジ『コードナンバー108 7人のリブ』、●TBS『刑事コジャック』第2シリーズ(アメドラ)
(水曜) TBS『夜明けの刑事』、NET『特別機動捜査隊』
(木曜) NET『非情のライセンス』
(金曜) 日テレ『太陽にほえろ!』
(土曜) TBS 『Gメン'75』
(日曜) なし


* ●印は1976年10月スタート。日テレ『いろはの〝い〟』は警察署詰めの新聞記者たちが主人公。NETは後のテレビ朝日、東京12チャンネルは後のテレビ東京。



放送開始時の1976年10月、アクション・ドラマ&刑事ドラマは全盛期で、週に10作品があった。プライムタイム帯に放送していたアメリカ制作の吹替ドラマ(略称・アメドラ)『特別狙撃隊☆SWAT』と『刑事コジャック』を入れれば12作品もなる。


『太陽にほえろ!』は勝野洋演じる純朴なテキサス刑事が壮絶な殉職を遂げて、沖雅也演じるキザで一匹狼のスコッチ刑事が加入した頃で、毎週当たり前のように視聴率30%台叩きだしていた。前年スタートの『Gメン'75』はすでに絶大なる支持を獲ていたが、翌1977年1月放送の初海外ロケであるヨーロッパロケシリーズが控えてるなどしていた人気が青天井の頃。本格的な初テレビドラマ参入作品『大都会 闘いの日々』(1976年1~8月放送)が終わったばかりの石原プロは当時テレビドラマ制作を一時休止していたのだが、その後の活躍はご存知の通り。週に10作品前後、ほぼ毎日にわたってなんらかの刑事&アクション・ドラマが観られる状況は1980年代初頭まで続くことになる。


こういった中で、『コードナンバー108 7人のリブ』は作られて放送されたわけなのだけれど、ブームに乗って作り、そして“他作品からパクったもの”・・・、よく言えば“リサーチに基づいたもの”が必ずしも受け入れられたわけではなかった。放送されていた火曜10時台は平日ながらも大激戦区で、TBS系では『刑事コジャック』が好評だったことから同時間帯での第2シリーズを『コードナンバー108 7人のリブ』と同日スタートさせ、NET系では前年の腸捻転解消後から放送されるようになったバラエティ番組『プロポーズ大作戦』が大人気で入り込む余地はなかった。当初2クール半年間放送するつもりが、1クール13話で年内終了してしまったのも肯ける(後番組は、同じく宣弘社が制作元となって、多少レギュラーが入れ替わった女刑事ドラマ『事件(秘)お料理法』で残り1クール分を穴埋め)。


さらに、裏番組であった『プロポーズ大作戦』は朝日放送の制作で、それに対してフジテレビ系で放送されていた『コードナンバー108 7人のリブ』は関西テレビが制作局だったことにも注目されたい。関西の局が制作局となって作ったものは全国ネットなどで同時間帯オンエアだと視聴率が西高東低になる傾向が強い。例えばテレ朝金曜9時から朝日放送が制作局となった「ハングマン」や「赤かぶ検事奮戦記」シリーズなどは、じつは関東では及第点くらいなんだけれども、関西では十二分にヒットの基準をクリアしていて、関東の倍近く獲る回もざらにあった。関東基準ではなく、関西基準でも視聴率が憂慮されたことで、当初は2クール半年間放送する予定だった『コードナンバー108 7人のリブ』の1クール打ち切り決定に拍車が掛かったのではないかと考える。


当ブログ記事 妖怪ウォッチな時代劇「五街道まっしぐら!」

http://ameblo.jp/goro-chayamachi/entry-11956596142.html

同じ1976年10月スタート作品。TBS『8時だョ!全員集合』とフジテレビ『欽ちゃんのドンとやってみよう!』がしのぎを削っていた土曜夜8時に投入されたものの、同じく年内で1クール打ち切りの目にあった。


さて、先日放送された、第1話と第2話を実際観たところ、まあやはり1クールで打ち切りになる要素はあるものだなとは感じた。レギュラー側にひとりも男優を配していないのと、ボスたる野際陽子の配下6人が容姿抜群な上に格闘戦がこなせるほどの腕っ節を持ち合わせてはいるのだけれど、それが6人ともに一様で個性が付けられているようには見えなくて、つまるところアクセントがないのだ。荒唐無稽な作品なんだし、もっと具象画的に、秘密兵器担当、変装担当、カーアクション担当など振り分けても良かったかと思う。なので、タイトルが示す“7人のリブ”の7人が持て余し気味だった。半分くらいの4人でいいんじゃなかったかな。


それから、“国際的”な設定を活かそうとしたのか、第1話と第2話は話のスケールは大きくても、一方で演じるゲスト側が無名な外人タレントで占められていたのがいただけない。故に、主人公側、ゲスト側のどちらにも感情移入が出来ないのである。ちなみに第2話ゲスト主演だった背が高い黒人男性のアレキサンダーは、アレックス・イーズリーの名前で音楽活動もしていて(どちらかといえばこちらのほうが有名で、現在も日本で活動中)、彼の見せ場として用意されたのか、歌を唄う場面などもあったから、マニアックには楽しめたのだが・・・。


Sadistics「The Tokyo Taste」

http://youtu.be/3eIB4LxS01o

翌1977年にアレックス・イーズリーが参加したサディスティックス(高中正義、高橋幸宏、後藤次利、今井裕)のライブステージ映像。当時出たばかりのファースト・アルバム収録曲「The Tokyo Taste」をラジとアレックス・イーズリーによるツイン・ボーカルのほか、バズのコーラス、斉藤ノブのパーカッション、ジェイク・H・コンセプションのサックスなどレコーディング・メンバーで演奏している。


というわけで、第1話、第2話ともにかったるい流れであった。まあ当時の夜10時台に観るタイム感を考慮していたのだろうか。それにしたって、チャンネル換えられてしまう隙がありすぎだ。よく、質が高い昔のテレビドラマのことを「映画と遜色ない」、「映画そのものだ」と褒め称えられるけれど、元はテレビ番組なのである。映画とは違って、唯一度きりの視聴機会(当時、ホームビデオはほとんど普及してなかった)、それも裏番組に簡単に変えられてしまう環境のなかで、CMまで含めて視聴者の目を釘付けにしなければいけない作りが要求される。『コードナンバー108 7人のリブ』に足りなかったものはそこにあるのかもしれない。



レギュラーが女性オンリーだった『コードナンバー108 7人のリブ』とは対照的に、日本テレビ広報誌『うわさのチャンネル』1976年秋号の表紙には、いずれも新番組である『前略おふくろ様』の萩原健一、『俺たちの朝』の勝野洋、『ひまわりの道』の三浦友和の男優三人をフィーチャー。



○ 付録


『コードナンバー108 7人のリブ』と同時期に放送されていたテレビドラマは、CS放送やDVDソフトなどでチェック出来る。


時代劇専門チャンネルでは、同じ1976年10月スタートだった『江戸特捜指令』(1976年10月~1977年3月、毎日放送-三船プロ)を来月2月よりリピート放送。日テレ『テレビ三面記事 ウィークエンダー』を裏番組に廻していた土曜10時の放送作品だから、これぞ“ザッツ・エンターテイメント”で無茶苦茶面白い!、かなりオススメ。


時代劇専門チャンネル 『江戸特捜指令』紹介

http://www.jidaigeki.com/program/detail/jd11000549.html


TBSチャンネルでは、じつは同時期であった山口百恵主演(級)による『赤い運命』(1976年4月~10月、TBS-大映テレビ)と後番組であった『赤い衝撃』(1976年11月~1977年5月、TBS-大映テレビ)を来月2月より放送。


TBSチャンネル 『赤い運命』紹介

http://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/d0366/
TBSチャンネル 『赤い衝撃』紹介

http://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/d0453/


『太陽にほえろ!』はこの時期のものは残念ながらCSでも地方局でも現在放送されていないのだが、「スコッチ&ボン編 I」(1976年9月~1977年1月放送分までを収録)としてDVDボックス化されている。しかし、2006年の発売品なのでそろそろ絶版になるかと思うから手に入れておきたい人はお早めに。


太陽にほえろ! スコッチ&ボン編I DVD-BOX「スコッチ登場」/バップ

¥31,320
Amazon.co.jp


必殺シリーズ(朝日放送-松竹)は、『コードナンバー108 7人のリブ』の主演格だったジュディ・オングも出演している『必殺からくり人』(1976年7月~10月)と後番組『必殺からくり人・血風編』(1976年10月~1977年1月)の頃。この時期のものは『太陽にほえろ!』と同様にCSでは現在放送されていないのだが、DVDソフトが出ている。こちらは店舗によってはレンタルもなされているので、視聴はしやすい。


他には、ついこの間まで日テレプラスでひんぱんにやっていた『前略おふくろ様』第2シリーズ(1976年10月~1977年4月)がDVDソフトされているし、レンタル店でも比較的多くのところにおいてあるかと思う。『Gメン'75』は放送時期は被っていないものの、終了直後の1977年1月放送の第1弾 第85話「'77元旦 デカ部屋ぶっ飛ぶ!」(なんとサブタイトル通り、1月1日の放送)と翌週からのヨーロッパロケシリーズ三部作(第86話「パリ警視庁の五百円紙幣」、第87話「冬のパリの殺し屋」、第88話「パリ-紺碧海岸(コートダジュール) 縦断捜査」)がDVDソフト化されている。