世の中、すごい『妖怪ウォッチ』ブーム。スーパーに買い物に行くたびに『妖怪ウォッチ』関連の商品は増えているし、どこもかしこも『妖怪ウォッチ』とコラボレートしたものだらけ。さらに、いま日本テレビで放送の妖怪を題材にしたドラマ『地獄先生ぬ~べ~』みたいに便乗商法もチラホラ出て来ている。
まあ、妖怪を題材にしたドラマなんてものは昔からけっこうある。とにかく画面が派手になるからネ。自分が愛するフジテレビ「月曜ドラマランド」枠でも、柏原芳恵&山本陽一というビミョーなキャストで『なんか妖かい!?』(1984年7月30日、製作・国際放映)や、実写映画化に先駆けること二十年以上前にあの『ゲゲゲの鬼太郎』(1985年8月5日、製作・東映)なんかが作られて放送されていた。それから妖怪が人々に本当に信じられた江戸時代が舞台の時代劇『しゃばけ』(2007年、製作・フジテレビ)なんかも記憶に新しい。
そう、時代劇にはけっこうあるのだ。怪談というジャンルもあるし。ただ、“なんでもあり”なはずの時代劇にしたって、妖怪を出してしまうとキワモノ的になり、あまり支持は得られずに、たいていカルトドラマになってしまう。そのなかでもカルト中のカルトドラマと思えるのは『五街道まっしぐら』。東映が制作してNETテレビ(後のテレビ朝日)で1976年10月16日から放送されていた作品である。
TBS『8時だョ!全員集合』とフジテレビ『欽ちゃんのドンとやってみよう!』(通称・欽ドン)が激しい視聴率争いを繰り広げた頃の土曜8時台にやっていたものだから、わずか11話で打ち切りになってしまって、ほとんどの人は知らないかと思う。かく言う自分も、超常現象が題材の“異色”な必殺シリーズ『翔べ!必殺うらごろし』(朝日放送-松竹、1978~1979年)DVDボックスに付いていた解説文で、その引き合いとして出されたことから知ったくらいだ。
【あらすじ】 伊賀にある忍者の里では、将来有望なふたりの青年忍者・小次郎(村野武範)と木猿(桜木健一)が互いに技を磨いていた。だが、世は天下太平な時代、忍者が真剣勝負を繰り広げていた時代は遙か遠い昔となり、“井の中の蛙”のふたりは自信過剰気味。見かねた師匠の一心斉(進藤英太郎)が少し本気を出して相手にすると、途端に半人前なのが露呈してしまった。そこで一心斉はふたりに伊賀から出て武者修行の旅を命ずる。その成果で、ふたりのどちらかに一心斉の美人な孫娘・かがり(安西マリア)と添わせて、跡目を継がす褒美も与えることにした。俄然、燃え上がるふたり。そして、ふたりが武者修行に旅立つのに乗じて、田舎暮らしに退屈していた現代っ子なかがりと彼らの先輩忍者で頼りがいがあるのかないのか判らない素っ頓狂な重蔵(田中邦衛)もなぜか着いてくることに。彼ら四人は行き先々の諸国で、修行も兼ねた旅の駄賃稼ぎとして、妖怪の仕業としか思えぬ人智を超えた事件に当たっていく。
忍者と妖怪を題材として、出演者は青春ドラマで鳴らしていた村野武範と桜木健一に、当時歌手として人気があった安西マリアを配したりと、面子的にエンターテイメントな時代劇である。さらに主人公達の忍者は冷徹なプロフェッショナルではなく、どこか抜けてる&半人前の愛嬌あるキャラであったし、恐怖に陥れる妖怪も実在させたものではなく、悪人たちが市井の人々を欺くために仕掛けた目眩まし的なものという、至ってコメディ調な作品であったらしい。
先頃、当ブログにて、テレ朝版『ドラえもん』の成り立ちを取り上げた際に紹介した書籍で、元テレ朝の編成部社員が書いた『視聴率15%を保証します!』にも、この『五街道まっしぐら』のことが載っていた。先述したようにTBS『全員集合』とフジテレビ『欽ドン!』がしのぎを削っていた土曜8時台、NETの編成部はこの事態についてどう解析したかというと、「両番組ともに子供の視聴者は積極的に観ていて、一緒に観ている大人は付き合っているだけ」。だから、大人の視聴者が観たいと思える番組を放つことで風穴が開けられることが出来ると判断したそうな。そこで、『全員集合』が始まる以前にかつて土曜8時台において自局がヒットさせていたエンターテイメントな時代劇を復活することにした。その第一弾が『五街道まっしぐら』だったのだが・・・。
やはり二強の壁は厚くて、哀れにも1976年内を持って11話であえなく打ち切り。1977年1月、年明けからの後番組は同じく東映の制作による時代劇で、今度は同心部屋を題材にした捕物帳の『駆けろ!八百八町』にしたのだけれど、こちらは早くも翌月2月に8話で打ち切りの憂き目に。しかも、あと二話分製作していたのに放送しなかったというから視聴率的にも評判的にもかなり悪かった模様。で、オカシイというか、珍しいというか、視聴率不振で打ち切りにしたのに後番組『駆けろ!八百八町』にも、主演だった村野&桜木をはじめ、安西、田中まで主要メンバーがそっくりそのまま同じような役回りで出ているのだ。
2クール分のスケジュールは押さえてあったんで、〝もったいないから、そのまま使っちゃえ〟とか、やけっぱちだったのだろうか・・・。
NETがテレビ朝日と名称を変えた1977年4月、『駆けろ!八百八町』の後番組として、性懲りもなくまたもや東映制作による時代劇で松方弘樹主演の『人形佐七捕物帳』がスタート。そして、1978年1月、その後番組となった松平健主演の『暴れん坊将軍』でようやく当たりを出した。