来月11月、ファミリー劇場で少女アクション学園ドラマ『花のあすか組!』(1988年、フジテレビ-東映)が久々にリピート放送される。


『花のあすか組!』の成り立ちはよく知られているところ。打ち切り番組の代替であったものである。1988年4月の番組開始から遡ること半年ほど前、フジテレビにおいて高視聴率を稼いでいた浅香唯主演『スケバン刑事Ⅲ 少女忍法帖伝奇』(1986年10月~1987年10月)の後番組として、同じ東映東京の制作によって1987年11月から『少女コマンドーIZUMI』が放送開始される。ところが、初回視聴率が一桁台だったことから、その視聴率が出た当日(すなわち放送翌日)に当初一年間放送する予定だったものが1クール13話に短縮されて打ち切りが決定してしまったのだ。さらに二転三転して、今度は準備中だった後番組への期間調整用として蛇足的な2話分が最後の最後に急遽足されてしまい、最初の志とは裏腹にグダグダな感じで15話で終了しなければならなかった。で、その後番組となったのが、やはり同じ東映東京による制作で、1988年2月にスタートした渡辺美奈代主演『藤子不二雄の夢カメラ』。わずか5話だけのミニシリーズではあったが、これは改編期となる3月末までのつなぎ番組だったからである。


『藤子不二雄の夢カメラ』は、先に1986年3月と一年後の1987年3月にそれぞれフジテレビ「月曜ドラマランド」枠で“ひなまつり”企画として、カノックスの制作により、当時旬な女性アイドル3人によるオムニバス版で制作して放送されていたものがあり、フジテレビ主導で同じティーンエイジの視聴者層向けだったこの東映が制作を受け持つ木曜7時半の枠に転化させたのである。それで月曜ドラマランドでやったのと同じく“女子高生(=それを女性アイドルが演じる)”を主人公にした三度目の実写映像化がなされることとなった。


主演に起用されたのは、おニャン子クラブ出身者で1985年デビューの渡辺美奈代。前年1987年におニャン子クラブは解散していたが、渡辺満里奈とともにWワタナベとして中期から最後まで中心メンバーとして活躍していた彼女だけに人気はその後も持続していた。私事ながら・・・、おニャン子クラブでは福永恵規の大ファンではあったのだけど、次に「いいなあ~」と思っていたのが渡辺美奈代。なので、「スケバン刑事」シリーズよりもアクション路線をさらに推し進めた『少女コマンドーIZUMI』の後番組に、それとは180度違うファンタジー路線となったこの『藤子不二雄の夢カメラ』も当時そのまま観ることと相成った。


写真屋の父(蟹江敬三)を持つ篠崎美奈代(渡辺美奈代)が、店舗兼自宅の天井裏倉庫で発見した不思議な古いカメラたちを取り出してみたことから始まる一話完結型のストーリーで、彼女の役どころは、ごく普通の高校生。同級生役に同年代であった杉浦幸と若林志穂が出演していて、劇中には高校での学園生活部分も出てくる。その高校の制服は、あまりイケテないデザインのブレザー。じつはこれ、このドラマのためにオリジナルで作られたものではなく、先述してるように同じ東映東京が制作してきた「スケバン刑事」シリーズ、『少女コマンドーIZUMI』で、トレードマークのセーラー服着た主人公たちと対比するモブキャラ扱いの他校生徒がよく着ていたのをそのまま流用しただけなのである。やはり急遽制作&つなぎ番組だったために、こうしたところでケチられている、というか、手が廻らなかった箇所がままあったのは仕方ない。


でも、連続ドラマ初出演となった渡辺美奈代側は気合いが入っていて、劇中に出てくる自室には等身大の役を演じる彼女が持ち込んだファンシーな私物で彩られたり、番組コンセプトに合わせた主題歌「両手いっぱいのメモリー」を作ったりした。もちろんシングル化され、オリコン最高位10位、TBS『ザ・ベストテン』や日本テレビ『歌のトップテン』にもランキングされるなどしてヒット。彼女のアイドル的な人気と原作者である藤子・F・不二雄のネームバリューもあって、すぐにビデオソフト化された。レンタルビデオ店がいまのようなDVDによるものではなく、今世紀初頭のまだビデオテープがメインだった頃までは、「月曜ドラマランド」枠でやっていた前二作と合わせて三本シリーズでどこの店でもたいていは在庫していたので結構知られている存在だったと思う。打ち切りの憂き目にあったばかりでなく、関東地方では一度たりとも再放送もされずに知る人ぞ知るカルト作品となっていき、今世紀に入ってようやくDVDソフト化された前番組『少女コマンドーIZUMI』とはエラい違いである。


そして、再度の仕切り直しとして新年度の1988年4月より、引き続き東映東京の制作による少女アクション学園ドラマながら、それまでの木曜7時半から月曜7時半に時間帯を変更して始まったのが小高恵美主演『花のあすか組!』だった。


ご存知のように『花のあすか組!』にはテレビドラマ版放送中の1988年8月に公開の、つみきみほ主演による同タイトルの映画版もある。テレビドラマ版が現代を舞台にした女子中学生たちによる勢力抗争が設定されていて、原作漫画の世界観になるべく沿って作られていたのに対して、映画版は近未来のサイバーパンクな世界を舞台にして、ほぼオリジナルな設定で脚色されたものであった。じつは映画版の方は1987年中には撮影が終了していて、当初から予定されていた1988年8月の公開までにだいぶ間があったものだった。つまり、映画版のほうが先に作られていて、その企画にテレビドラマ版が後から乗ったものなのである。


日本映画専門チャンネル 『花のあすか組!』紹介

http://www.nihon-eiga.com/program/detail/nh10001208_0001.html


さて、テレビドラマ版は放送時間枠がそれまでの全国ネット枠からローカルセールス枠になったんで制作費とか減らされてしまったのか、源流である「スケバン刑事」シリーズなんかと比べると明らかにショボい。しかしながら、「スケバン刑事」シリーズが無名アイドルから一躍トップアイドルになれる登竜門だったことで、同じフジテレビ-東映制作によるこの作品にも各芸能プロダクションからイチオシの出演希望者が殺到していて、レギュラーはもとより、セミレギュラー、ゲストなど出演している十代の女優たちは逸材揃いだった。当時ほぼ無名だった和久井映見もセミレギュラーで出ていたりする。話は逸れるが、『花のあすか組』終了直後の1988年10月から同じフジテレビで始まった南野陽子主演の連続ドラマ『追いかけたいの!』に、売り出し中だった宮沢りえがレギュラーでテレビドラマに初出演していて、同年代の和久井がその親友役でレギュラー出演するなどこの頃から着実にキャリアを積んでいったのだった。


当ブログ記事 「花のあすか組!」の残映、映画女優になれなかった小高恵美

http://ameblo.jp/goro-chayamachi/entry-11407903127.html


1988年9月、当初の予定通りに『花のあすか組!』は半年間の放送を完了。主演の小高恵美、石田ひかり、小沢なつきら、あすか組が歌った主題歌「悲しげだね」もスマッシュヒット。一応は成功を収めたのだけど、これにてフジテレビ-東映の制作による少女アクション学園ドラマ路線は綴じてしまう。