今回もまたまた放送ライブラリーネタ。


自分がよく通っていた二十年前の頃に比べると格段に閲覧出来る作品は増えていて、観たいものがいっぱいあった。前々回の記事で、そういったオススメ番組いくつか紹介したのだけど、今回はさらに〝とっておき〟のを紹介したい。それは、1987年12月にテレビ朝日系で放送されたドラマ『私のハートパートナー 離婚カップルの同居物語』(全二回)。


放送ライブラリー 『私のハートパートナー 離婚カップルの同居物語』

http://www.bpcj.or.jp/search/show_result.php?query=742868&pagetop=0&category=0&sort=3


【あらすじ】

出版社勤務の月刊誌編集部員・カオル(浅野温子)と新進気鋭のフリーカメラマン・拓也(三上博史)は、すれ違い生活の末、5年間の夫婦生活にピリオドを打って離婚する。しかしその直後、カオルは独身生活に戻るための新居が契約トラブルで、拓也のほうは引っ越し費用にアテにしていた多額の撮影料が入ってこないという事情で、しばらくは住んでいた賃貸マンションで元のままの同居生活を続けることになってしまった。カオルと拓也、不意の同居生活延長でそれまで離ればなれだった心の距離が縮まっていくようになる。面白くないのは、拓也の若い恋人の久美(仙道敦子)。離婚してても仲良く、さらに同居もしているふたりが気が気でない。ある日、カオルは編集長命令で拓也とコンビを組まされて北海道の釧路に撮影取材旅行へ出掛けた。大御所の写真家ばかりが飾る巻頭グラビア用の撮影に抜擢されて気合いが入る拓也を甲斐甲斐しくフォローするカオル。ふたりはまるで恋人時代に戻ったかのような仲睦まじい時間を過ごす。ところが、宿にしていた現地のホテルで、久美が待ち伏せしていた…。


この『私のハートパートナー 離婚カップルの同居物語』、木曜夜9時からの1時間枠でのドラマで、その話数がわずか全2回。放送されていた「気ままな女シリーズ」枠では、1クールの半分ほどの5~6話によるミニシリーズをさらに細かく割った2~3話単位のミニミニシリーズで形成していた。当時のテレ朝は『ドラえもん』か『ニュースステーション』くらいしかヒット番組はなく、ドラマなんかは壊滅状態で単発の「土曜ワイド劇場」が当時のヒットの基準である視聴率20%を稼げる存在でしかなかったのだ。1クールでさえも番組が持たない弱さをある意味露呈していた。


この木曜9時からの「気ままな女シリーズ」は、TBS『ザ・ベストテン』の裏番組。二年後には終了してしまう番組末期に差し掛かる頃だったものの、当時まだそれでもコンスタントに視聴率20%は獲っていた人気番組であったし、「歌っているのがアイドルばっかでつまらない!」とドラマを観たい人は日テレの「木曜ゴールデンドラマ」枠の2時間ドラマを観ていたから、低視聴率な上、毎作品2~3話でパッパと終わってしまうこのテレ朝のドラマ枠でやる作品なんて〝知る人ぞ知る〟以下、誰も知らない存在だった。でも、『私のハートパートナー 離婚カップルの同居物語』はテレビドラマ史において極めて重要(になりえたかもしれない)なのである。


というのは、まず注目したいのが、キャスト。主演の浅野温子は出産による一時活動休止から復帰後の『あぶない刑事』(1986年10月~1987年9月)、『パパはニュースキャスター』(1987年1月~3月)で人気女優の地位を不動のものにしようとしていた頃。相手役の三上博史は当時若手注目俳優のひとりで、出世作となった出演映画『私をスキーに連れてって』が前月11月に公開されたばかり。そして、大ブレイクを果たすフジテレビ月9『キミの瞳をタイホする!』(1988年1月~3月)の直前。


浅野温子と三上博史といえば、互いにビッグネームになっていた、トレンディドラマ全盛期の1990年にフジテレビの月9『世界で一番キミが好き!』(1990年1月~3月)で主演と相手役で共演している。


フジテレビ ONETWONEXT番組紹介 『世界で一番キミが好き!』(放送未定)

http://www.fujitv.co.jp/otn/b_hp/909200182.html

フジテレビ オンデマンドでは公開中 『世界で一番キミが好き!』

http://fod.fujitv.co.jp/s/genre/drama/ser4269/


それ以前に、テレ朝でこの〝トレンディドラマ〟な組み合わせが実現してたのだ。トレンディドラマはフジテレビとTBSがリードして、日テレとテレ朝はその流れに乗ることさえ出来なかったことはよく知られている。しかし、そのテレ朝でトレンディドラマ前夜に〝トレンディドラマ〟の第一条件である旬の人気若手女優と人気若手男優を組み合わせたドラマが放送されていたのは正直驚きである。


キャスト以外でも設定がかなり〝トレンディドラマ〟していて、離婚カップルの職業は雑誌編集者とフリーカメラマン、そしてフリーカメラマンの若い恋人の職業がファッションモデル。トレンディドラマにおける必須条件の一つ、〝憧れの職業〟というのを押さえている。それから物語の舞台となった離婚カップルが同居しているマンションは、東急東横線の代官山駅前という超オシャレな立地。そこで子供もいなく、すれ違い生活だったから、生活臭の無さがハンパない。


トレンディドラマはいつ始まったか?


これには諸説あって、TBSで1986年7月から9月に放送された『男女7人夏物語』だというものや、先述したフジテレビ月9枠の『キミの瞳をタイホする!』を起源とするものがある。自分としては『キミの瞳をタイホする!』のほうを推している。


で、トレンディドラマ前夜ともいえる前年1987年にはいくつかの習作が作られている。一番知られているのは、フジテレビによる浅野ゆう子主演の2時間ドラマ『晴海コンパニオン物語』である。


当ブログ記事 幻のトレンディドラマ「晴海コンパニオン物語」が今月放送

http://ameblo.jp/goro-chayamachi/entry-11156696824.html

当ブログ記事 「晴海コンパニオン物語」と、1987年の浅野ゆう子の商品価値

http://ameblo.jp/goro-chayamachi/entry-11173028133.html


『晴海コンパニオン物語』はお蔵入りするなどして制作当時かなり不遇な扱いを受けたのだが、その後で制作スタッフが主演だった浅野ゆう子を再び起用しての『キミの瞳をタイホする!』と『抱きしめたい!』がヒットしたことによって、ご存じのようにトレンディドラマのブームが作られていく。


もしかしたら、『私のハートパートナー 離婚カップルの同居物語』もそれが礎となって、何かしら後継作品を作っていたのならば、テレ朝もトレンディドラマのブームに乗れたかもしれない。